トライアル西友、セブン&アイ、イオンの行方は? 気鋭のアナリストが解説
食品小売を中心とした未曾有の大再編で幕を開けた2025年。今後の国内小売業界の勢力図を根本から変えるようなこうした動きを、長年業界をリサーチ・分析してきたアナリストはどうとらえているのか。UBS証券の風早隆弘氏に解説してもらった。
トライアルの西友買収は“割高”もメリットは大きい

直近で“ビッグニュース”となったのが、トライアルホールディングス(福岡県:以下、トライアル)による西友(東京都)の買収だ。買収金額は市場関係者の想定を超える3800億円まで吊り上がった。有利子負債を含めたトータルの買収額は4000億円を超えている可能性が高く、EV/EBITDA倍率※は11~12倍に上る。
単純に買収額だけを見れば、「非常に高い買物」といえるだろう。このディールは、トライアルがオーナー企業だからこそできた決断だ。オーナーはより長い時間軸で会社をとらえるため、大胆な決断を下しやすい。
※EV(企業価値=時価総額+純有利子負債等)のEBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)に対する倍率を表したもの。企業買収時の評価基準の1つで、業種や企業、フェーズによって異なるが、一般的には8倍程度が目安とされる
一方で、西友の戦略的な価値がきわめて大きいことは確かだ。同社は240超の店舗網と約2万人の従業員という物的・人的資産を持ち、5000億円規模の売上を有する。その西友を買収することでトライアルは、1兆円規模の企業体をつくるための「時間」を買ったことになる。これは大きなメリットだ。
また、仕入れ条件の改善などスケールメリットの獲得にもつながるし、売上規模が1兆円を超えれば当然、メーカーや卸などに対してのプレゼンスは高くなる。トライアルは出店や商品開発の面で、これまで以上に優位性を得られるだろう。
トライアルはこれまで、食品小売業界ではトップ10圏内を行き来していたが、西友の買収によって業界3番手へと一気に躍り出ることになる。この事実そのものが国内小売市場にとっては大きなインパクトであり、あるいは“夢のある話”ととらえることもできるだろう。
セブン&アイが単独で価値向上を実現する条件
他方、現在進行形で注目を浴びているのがセブン&アイ・ホールディングス(東京都:以下、セブン&アイ)をめぐる動きである。
今年3月、セブン&アイは、完全子会社のヨーク・ホールディングス(東京都:以下、ヨークHD)が束ねるスーパーストア(SST)事業グループを8147億円で譲渡することで、米投資ファンドのベインキャピタルと合意した。
ヨークHDのEBITDAが24年度に640億円だと仮定とすると、
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