知っておきたい線状降水帯の基礎知識と、流通業界における対策

2023/07/12 05:55
常盤 勝美 (True Data流通気象コンサルタント)
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 ここからは線状降水帯発生が予想されている時にチェックすべき項目を見ていきましょう。まず、自社あるいは店舗周辺が、線状降水帯のかかる領域に入るかどうかを確認します。もし該当する場合は、強い雨が比較的狭いエリアの中で数時間以上にわたって降り続き、記録的な雨量となるおそれがあります。主に雨に関する、以下の2つの方向性の災害発生を想定し、事前準備を行います。

災害の方向性 想定される被害 参照すべき気象庁情報
土砂災害 大量に雨水を含んだことによるがけ、斜面、法面(人工的な斜面)などの崩壊、土石流 大雨警報
土砂災害警戒情報
土砂キキクル
浸水害 河川・湖沼氾濫、堤防決壊、排水処理能力を越えた雨水流入による冠水 大雨警報
洪水警報
指定河川洪水予報
浸水キキクル
洪水キキクル

 これらを確認したうえで、以下の項目を確認していきましょう。

・本部-現場間の密なコミュニケーションによる逐次状況把握
・大雨の影響を受けそうな公共交通機関路線沿線に住む従業員に対しての自宅待機指示
・公共交通機関の寸断を予期した、従業員の避難先・宿泊先の確保
・物流トラックに対して、安全第一での業務遂行指示、善後策の確認
・社屋、店舗周辺でゴミや落ち葉などが詰まっている側溝を清掃
・建物内への浸水を防ぐための土のう積み
・店舗において、床に陳列している商品の移動
・携帯電話などの充電
・停電・断水を想定した準備(データバックアップ、トイレ用水の確保)
・災害発生時に需要が急拡大する商品(防災用品)等の、特設売場などでの展開

 「顕著な大雨に関する情報」が発表されたら、それは甚大な災害がすでに発生していてもおかしくない状態です。お客さま、従業員の安全確保を最優先としたうえで、なるべく店舗への被害が大きくならないように、また被災した地域住民の方々に寄り添うことを考えます。周辺の雨雲の状況によっては、店内にいらっしゃるお客様の帰宅を必ずしも促すのではなく、強雨がおさまるまで店内での待機を案内するのも一案です。

 線状降水帯の発生が予測されてもあわててパニックにならないよう、建物周辺の海抜高度(主辺地企図の海抜高度差)や冠水が起こりやすいアンダーパスの場所などを普段から確認しておきましょう。大きな川のすぐ近くにある事務所・店舗では、当該地域に線状降水帯が発生していなくても、上流域での集中豪雨により河川水位が上昇し、堤防を越水することがまれに起こりますので、建物周辺だけでなく上流域での降雨状況にも注意が必要です。

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記事執筆者

常盤 勝美 / True Data 流通気象コンサルタント

株式会社True Data 流通気象コンサルタント  神奈川県小田原市生まれ。

大学で気候学、気象学を専攻した後、20年以上にわたり民間気象情報会社にて、コンビエンスストア、スーパーマーケット、食品メーカーなどに対してウェザーマーチャンダイジングの指導などを行う。現在は株式会社True Dataに所属し、流通気象サービスを推進している。著書に「だからアイスは25℃を超えるとよく売れる」(商業界)など

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