本格到来!? 小売業のクラウド活用
導入から4年で利用額が20倍に拡大
こうした成果を受け、イオングループは「WAONポイント」の会員向けウェブサイトでもクラウドサービスを採用した。WAONポイントは、購入金額200円につき1WAONポイント(1円相当)が加算されるポイントプログラムで16年6月にスタート。同サイトでは、WAONの利用方法や、最新のキャンペーン情報などを配信している。
「ポイントを利用するためのサービスの基幹となるシステムのため、DR(災害対策:ディザスタ・リカバリー)を検討する必要があった。アジュールを採用することで、拡張性を担保しながら、DRに対応したサイトを短期間で構築することができた」(篠原氏)。
ウェブサイトでのアジュールの活用は幅広く、「おせち受注システム」「住まい探しサイト」「ブランドEC」などでも利用されている。「最新のアジュールは機能が充実しており、運用における技術的なハードルも非常に低くなっている。現在イオングループでは、アジュールを活用できそうな案件では積極的に使っていく、という方針になっている」と篠原氏は話す。
イオングループでの、アジュールのサービス利用料金の支払額は、13年の正式な導入開始年と比較し、タッチ・ゲットを導入した14年は約4倍、16年では20倍となっている。同社が業務システムのクラウド化を加速させているのがうかがえる。
柔軟な料金システムで費用を節約
サブシステム中心とはいえ、運用当初の20倍も利用を拡大している背景には、同サービスの柔軟な料金システムにも秘密がある。
アジュールでは、「使用した時間」単位での支払いとなるため、使用しないシステムを「オフ」にすることで、費用を抑えることができる。たとえば、社内システムなど日中に使用するものは、夜間にシステムを停止することで利用料金を削減可能だ。イオングループの例であれば、「おせち受注システム」といった季節のキャンペーンシステムなどは、期間外に使用を停止させることで、その分の利用時間を節約できる。
このような取り組みを通じ、イオングループでは、アジュールを活用することでプライベートシステムに近いクラウドと比較して、3分の2程度にリソース費用を節約できているという。
「クラウドサービスのメリットは、『サーバーを資産に持たなくていい』ということ。必要な容量にあわせて自由に取り扱いを設定できるため、サーバーの調達や管理、売却などの手間がかからない。そのため、必要となるサーバーの規模がわからないオムニチャネル施策など、トライアンドエラーが必要な施策には、クラウドが活用しやすい」
さらに篠原氏はこう続ける。「ITシステムは新陳代謝していくものなので、『やめやすさ』も重要になる。通常、サーバーの購入は『資産』となってしまうため、調達までのハードルが高くなってしまう」
では今後、イオングループではすべてのシステムをクラウド化する構想はあるのだろうか。
「すべてをクラウド化するか、という判断が迫られる時期が来るのではないかと思っている。とくに、ビッグデータの活用などは将来的にクラウド上で行うようになるのではないか。今後のサービス稼働率の向上や機能の充実などに注目しながら、より効率的な運用を進めていきたい」と篠原氏は話す。
顧客サービスの向上、効率的な事業運営、そして徹底したコスト管理。イオングループのアジュール活用法は、この3つを柱として今後も拡大が続きそうだ。