本格到来!? 小売業のクラウド活用

2017/09/15 11:30
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 ● Case Study 2

POSシステムをクラウド上に構築
リアルタイムの売上把握が可能に

サッポロドラッグストアー

サッポロドラッグストアー(富山浩樹社長)は、北海道を地盤に190店舗超のドラッグストア/調剤薬局を展開する。同社は14年、道内で利用できる地域共通ポイントカード「EZOCA(エゾカ)」を導入するため、POSシステムをクラウド化した。新POSシステムはエゾカ導入を実現する一方で、ITコストの削減をもたらした。

地域共通ポイントカード「EZOCA」導入をめざす

サッポロドラッグストアーはPOSシステムをクラウド化し、新店POS導入コストを削減した
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地域共通ポイントカード「EZOCA(エゾカ)」を導入するためPOSシステムを刷新した

 サッポロドラッグストアーがクラウドを利用したPOSシステムに刷新したきっかけは、道内のほかの小売業やサービス業でも利用できる地域共通ポイントカード、エゾカの導入であった。

 

 同社は14年6月に自社のポイントカードを地域共通ポイントカードに切り替える計画を持っていた。これを実現するために、他社が参加できるようにPOSシステムの改修が必要になったのである。

 

 POSシステム刷新プロジェクトの指揮をとった、サッポロドラッグストアー業務システム部IT開発担当マネジャーの小野寺雅樹氏はシステム会社やPOSベンダーに相談を持ちかけた。しかし、思うような返事を得られなかったという。

 

 「他社のシステムと連携できない自社内で閉じたシステムで、数千万円から数億円のコストがかかるという提案が返ってきた。POSシステムの刷新はなかなか前に進まなかった」

 

4U Applications取締役兼GRIT WORKS社長の久下雅幸氏

 そこで声をかけたのが、「POS4U」というPOSアプリの開発会社である4U Applications(以下、4U)である。当時4U社長だった久下雅幸氏は、Microsoft Azure(アジュール)のPaaS(Platform as a Service:パース)であるクラウド・サービスを利用することを提案した。久下氏は次のように話す。

 

 「アジュールはパースとして完成度が高い。初期投資を抑えながら、企業成長に対応した拡張性と柔軟性を確保するには、オンプレミス(自社運用)やIaaS(Infrastructure as a Service)ではなくパースがベストだと考えた。アジュールであれば、われわれのこれまでの.NET開発環境を活用できるメリットもあった」

 

サッポロドラッグストアー業務システム部IT開発担当マネジャー兼GRIT WORKS取締役の小野寺雅樹氏

 この提案に対して小野寺氏は「業務システムでのアジュールの活用については半信半疑だった」と言う。しかし、セキュリティや信頼性についての久下氏の丁寧な説明を聞き、最終的には久下氏の提案を受け入れた。

 

 13年6月にプロジェクトが立ち上がり、アプリケーション開発も動き出した。1年後にエゾカ導入が予定されていたため、それまでに完成させる必要があった。

 

 プロジェクトが始動した半年後の12月に本部売店のPOSレジをアジュールに接続し、翌14年1月には実店舗の接続実験に着手した。5月には全店のPOSレジ600台を接続し、新システムに完全移行した。そして6月に地域共通ポイントカードのシステムを接続し、計画どおりにエゾカの運用を開始した。

 

図表●サッポロドラッグストアーのPOS開発
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 その後、矢継ぎ早に機能を追加していく(図表)。14年11月にプリペイド方式の「EZOマネー」機能をスタート。15年3月に免税対応機能を付加し、5月にギフトカードを導入した。16年に入ると1月に銀聯決済、6月に電子マネー対応を開始した。

 

 短期間でさまざまな機能を開発できた要因について、小野寺氏は「4Uが開発したPOSアプリケーションのフレームワークでは、最小の手直しと最小のテストで動くようになっている。加えて、高頻度でバージョンアップして使い勝手をよくできるアジュールのメリットもあった」と説明する。

 

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