クローガーに暗雲!鳴り物入りのCFC 戦略見直しと合併問題の行方

文:平山 幸江 (在米リテールストラテジスト)
Pocket

全米最大の食品スーパー(SM)であるクローガー(Kroger)は、同業他社だけでなく、ディスカウンターやネットスーパープラットフォームとの厳しい戦いも強いられ、2023年度の売上高は前年度から1.2%伸長したものの、当期純利益は同4.4%減の減益となった。また、22年に発表した業界第2位のアルバートソンズ(Albertsons)との合併に政府が阻止の動きを見せ、さらには昨今開設に注力してきたフルフィルメントセンター(FC)も一部撤退するなど、今後の成長には暗雲が漂い始めている。

厳しい情勢が見込まれるアルバートソンズとの合併

 今年2月、連邦取引委員会(FTC)は、クローガーとアルバートソンズによる246億ドル規模のM&A(合併・買収)は健全な市場競争を妨げ、結果として物価を上昇させるとしてこれを提訴、さらにカリフォルニア州を含む8州とワシントンDCも同様に提訟を起こした。

 また両社従業員の多くが参加している食品小売業界の労働組合2団体も、「統合後の従業員への影響が不透明」という理由で昨年、買収反対の決議を行っている。両組合は買収が成立した際に、アルバートソンズの株主に約束されている40億ドルの払戻金によって、アルバートソンズが財務的に弱体化する点についても批判している。

クローガー外観
米SM最大手クローガーの今後の成長戦略に暗雲が垂れ込めている

 これに対してクローガーとアルバートソンズは23年9月、SM23店を展開する大手食品卸のC&Sホールセールグローサーズ(C&S Wholesale Grocers)に579店舗(24年4月時点)と物流センター8カ所、さらに複数のプライベートブランド(PB)の販売権を計29億ドルで売却すると発表した。これによって買収後の市場への影響は小さくなるという論法だが、FTCは前述の訴状の中で、この売却計画を

続きを読むには…

この記事はDCSオンライン+会員限定です。
会員登録後、DCSオンライン+を契約いただくと読むことができます。

DCSオンライン+会員の方はログインしてから閲覧ください。

平山 幸江 / 在米リテールストラテジスト

慶應義塾大学、ニューヨーク州立ファッション工科大学卒業。西武百貨店勤務後1993年より渡米。伊藤忠プロミネントUSA(Jクルージャパン)、フェリシモニューヨーク、イオンUSAリサーチ&アナリシスディレクターを経て2010年より独立。日系企業の米国小売事業コンサルテーションおよび米国小売業最新トレンドと近未来の小売業をテーマに、ダイヤモンド・リテイルメディア、日経MJ他に執筆、講演会多数。

関連記事ランキング

関連キーワードの記事を探す

© 2024 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態