第4回 いまアメリカのスーパーでポイントプラグラムが見直されている理由

岩田 太郎(在米ジャーナリスト)
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 思い切った割引とポイント付与の組み合わせでユーザーのリピート率を高めるアルバートソンズはさらに、テック大手のGoogle と提携し、AIを活用した対話型ショッピング、予測機能を活用した食料品購入リスト作成、Googleマップを活用した地元密着型のショッピングマップなどの機能をFor Uアプリに埋め込んでいる。顧客の買い物データを集積し、アプリのプッシュ通知やメールで、顧客の好みに基づいて予測されるお買い得情報を届けるためだ。

顧客の好みを学習したAIの提案に基づき、届いたクーポン。「Clip deal」で適用を受ける。
顧客の好みを学習したAIの提案に基づき、届いたクーポン。「Clip deal」で適用を受ける。

 筆者の場合、「アイスクリーム好き、サラダを毎週購入」というパターンをAIが学習済みであるため、定期的にそれらの商品のFor U限定のクーポンが届く。また、「バターをおよそ1か月半ごとに、ドレッシングを3週間ごとに買う」という行動も知られており、そうした商品を切らしそうになるタイミングで、好みのブランドのクーポンが送られて来る。

 こうした形のアプリ内限定の顧客とのつながりは、「コロナワクチンの記事をスマホで読もうとしたら、セーフウェイのアイスクリーム割引のクーポン広告が表示された」というような、気持ち悪いハイパーパーソナライゼーションにならないため、受容されやすい。

生鮮宅配の入り口機能
オムニチャンネルで逃がさない

 アプリを中心としたポイント制度は、実店舗における顧客の使用額を増やせるだけではない。米国のSMは、次世代型のショッピングとして、現段階では利益度外視で生鮮宅配をプッシュしている。その中でポイントアプリは、宅配の入り口としての重要な役割も担っている。

 For Uアプリでは商品名やカテゴリー別の検索ができ、まるでアマゾンのサイトで買い物をする感覚で、商品をカートに加えてゆくことができる。そして、チェックアウトの段階において、「宅配」「店頭受け取り」「店頭支払い」などのオプションが提示される仕組みだ。登録したクレジットカードや非接触型決済などの方法でワンタッチの支払いもできる。

 宅配には、オーガニック製品5%引き、無料のスターバックス商品券など、通常よりもより魅力的な値引きが加えられ、顧客のデリバリーシフトを促している。その便利さから離れられなくなった顧客は、月額12ドル99セント(初月無料、2021年中はさらに毎月5ドル引き)、あるいは年額99ドルのFreshPassデリバリーサービスを利用し続けることになる。顧客にとっては、ポイントを貯める機会が増えることになり、ウィン=ウィンだ。

 一方、実店舗と宅配の買い物データは、突き合わされ、さらに解析が加えられることで、商品提案がよりきめ細かくパーソナライズされてゆく。リアル店舗とオンラインの両方でエンゲージメントと追跡を途切れさせないところが、従来型のポイントプログラムとの違いであるといえよう。

 翻って、ユーザーから見た問題点としては、①いちいちクーポンをクリップしなければならない不便さなど、売り手目線のアプリ設計、②クリップしたクーポン割引が適用されないミスなど、プログラムの不具合、③ポイント引き換えで無料入手できるはずの商品が、他の顧客も狙っているため往々にして欠品、などが挙げられる。また、チェーン側にとっては、全体の売上が伸ばせるが、大幅割引でマージンが縮小するデメリットがある。ディスカウントに慣れた顧客を、いかに「店頭価格レベル」に誘導して戻すかも、チャレンジだ。

 しかし、全体的に見れば、思い切った割引と魅力あるポイント引き換えのオプション、さらに宅配やオムニチャンネルの利便性をうまく組み合わせることで、AIを中心とするデータ集積・解析・利用のDXが、正のサイクルに乗った例といえる。インフレ進行に伴う節約志向を、DXに活かす事例として注目されよう。

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