EC売上構成比が1年で8.8%から17.9%へ ターゲットがオムニチャネル化で行ったことは
新型コロナウイルスの感染拡大下でEC売上高が急成長し、業績に大きく寄与した小売企業は数多い。なかでも米小売大手のターゲット(Target)は3年前から進めてきたオムニチャネル戦略への投資が見事に“開花”した企業の代表例だ。成功の背景には、時代の流れを先読みして店舗の役割を再定義し、外部企業の買収や提携なども通じてサービス向上と新規顧客開拓に注力したことが大きい。ターゲットの卓越したオムニチャネル戦略の中身とは。
EC売上高は145%増
ターゲットの過去3年間の業績(図表❶)を見ると、オムニチャネル戦略成功の“お手本”ともいえるような数字が目に飛び込んでくる。2020年度の売上高は対前年度比19.8%増で、前年の3%超の伸び率から大きく飛躍。これを牽引しているのがEC事業で、売上高は同145%増、売上高構成比は8.8%から17.9%へとそれぞれ急拡大している。
また、多くの企業がコロナ禍で落とした粗利益率にもほぼ変化はなく、営業利益率は増加した。原価には商品コストだけでなく、倉庫や店舗からの配送、フルフィルメント・物流拠点の運営コストも含まれる。粗利益率を見る限り、無理な販促で売上を構築したわけでもなく、EC売上増加に伴って拡大した物流コストも緻密にコントロールしたことが推測される。
図表❷は設備投資額の推移だが、年々既存店への投資を抑制する一方でIT、サプライチェーンなどには投資を増やしている。20年度の新規出店に係る投資は同約24%増加しているが、これは都市型小型店舗への投資がメーンで、EC需要の大きい都市部の商圏で店舗顧客とEC顧客の両軸を開拓する姿勢を明確にしている。
シプト買収に始まる盤石のオムニチャネル戦略
ターゲットのEC売上が急成長を遂げたのは、17年12月に5億5000万ドル(約605億円)を投じてオンデマンド配送サービスのシプト(Shipt)を買収したことと、その後のオムニチャネル体制づくりがあったからにほかならない。
ターゲットはここ数年、店舗を活用したフルフィルメントづくりを着実に推進し、現在では総店舗数約1900店舗のうち
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