環境や消費者に合わせ、変化への対応を加速=ウォルマート社長兼CEO ダグ・マクミロン
時間給からキャリアをスタートした私は、ビジネスや、
よい商人になるために必要なことをウォルマートで学んだ
顧客中心主義の組織の構築を実現するには、ウォルマートで働くわれわれ全員が強い商人にならねばならない。そこで、従業員への投資を推進する。これが先ほど述べた方針の2つめだ。
ウォルマートが従業員に成功する機会を提供し、彼らの成功を支援していることを私は誇りに感じているし、私自身がその体現者でもある。
かつて、当社の時間給の従業員として働き始めた私は、ビジネスや、よい商人になるために必要なことをウォルマートで学び、すばらしいチャンスを与えてもらった。従業員にも、より多くの機会を提供するために複数のプログラムを用意している。
国際部門を担当していた頃、アフリカ、ラテンアメリカ、中国など世界中の国々へ行き、世界各地のウォルマートで働く従業員に会った。現在もさまざまな店舗を訪問している。どの国の従業員も、チャンスを求めている。ウォルマートは実力主義なので、あらゆる従業員にチャンスがある。
ウォルマートは従業員の処遇面で批判を受けることがある。だが同業他社に負けない給与を支払っている。そうしなければ、有能な人材を集めることはできないからだ。
米国内の従業員130万人に絞って話すと、130万人のうちの1万人未満が、合衆国もしくは州が定めた最低賃金受給者だ。残りの従業員にはそれ以上の給与が支払われている。
また、従業員が経営幹部に直接連絡をとれる「オープン・ドア・ポリシー」もある。従業員からの電子メールや電話、店舗訪問時の直接のコミュニケーションを通じて、われわれは実情を把握することができ、問題があれば対応している。
膨大な量のデータを世界中で店舗運営に生かしてきた。
この先は買物体験向上のため情報活用を進める
3つめの方針は、技術とイノベーションで他社に先行することだ。技術の進化とそれに伴う小売業での変化が、われわれにとって何を意味し、企業が成長し続けるために何をすべきかを理解することが重要だ。
技術、データ、情報によって、お客さまに奉仕する新たな方法が多数、誕生している。小売企業を新たな世界へと導く扉は、すでに開かれている。
モバイルの普及によって、すべてが大きく変化した。消費者はすでにテレビを見る時間よりもデジタル・デバイスを使用している時間のほうが長いといわれる。当社のEコマース事業でも、PCからよりもモバイルからの注文件数のほうが多くなっている。
当社はロンドンの地下鉄の駅に注文品の受け取り拠点を設けた。ウェブサイトから注文した商品を、駅前に駐車したトラックから受け取れるサービスだ。このトラックは何の変哲もないトラックだが、2万6000アイテムの商品をお客さまに手渡す機能を持っている。今後、扱いアイテム数がどれぐらいまで増えるか、想像もつかない。
当社は、約30ペタバイトの購買情報を保有している。当社は何年間も、世界中の店舗の運営にこの膨大なデータを活用してきた。しかし今は、それぞれのお客さまの行動や趣向に合った買物体験を提供するために、データを利用している。
当社は、28ヵ国に合計1万1000店の店舗を展開している。14年1月期の売上高は4762億ドル。世界最大の小売企業であることは、当社にとっての強み。この強みは、当社が持つオンラインやモバイルに対応した技術力とともに、実店舗とデジタルを融合させるうえでも、競争優位に働いてくれるはずだ。
以上、変化について話してきたが、変えてはならないものがある。それは、当社の企業文化と価値だ。誠実さ、敬意、卓越──これらはわれわれがよりどころとする信条。この企業文化こそが、当社の強みだ。