[ワシントン 5日 ロイター] – 米商務省が5日公表した2019年の米貿易赤字は、前年比1.7%減の6167億5500万ドルと、13年以来6年ぶりに縮小した。中国との貿易摩擦によって輸入が減った。消費支出が鈍化する中でも貿易が下支え要因となり、米経済は第4・四半期も緩やかに伸びた。
モノの輸入は1.7%減、輸出は1.3%減だった。トランプ政権の「米国第一」政策によってモノの流れが減ったことを示す。
ただ12月はモノの輸入が大幅に持ち直し、貿易赤字は11.9%増の488億8000万ドルとなった。市場予想は482億ドルだった。11月の赤字額は当初発表の430億8600万ドルから436億9100万ドルへ改定された。
米中貿易戦争が一段落する中、貿易赤字の縮小が継続する公算は小さいとの指摘が聞かれた。ナロフ・エコノミック・アドバイザーズの首席エコノミスト、ジョエル・ナロフ氏は「貿易赤字の縮小はすべて対中赤字によるもので、今後数年さらに縮小することは見込まれない」と述べた。
通年での貿易赤字減少分(6167億5500万ドル)は、米国内総生産(GDP)の2.9%に相当。18年の水準から3%減となる。
トランプ大統領はかつて自身を「タリフマン(関税の男)」と呼んだ。選挙活動中も大統領就任後も、不当に安い輸入品を一段と制限したり自由貿易協定を再交渉したりすることで貿易赤字を縮小すると公約してきた。
昨年に米中の緊張感が最高潮に達した際、米国は消費財を含む数十億ドル規模の中国製品に関税を課し、輸入が減った。
米中は先月、第1段階の合意に署名し、19カ月間続く米中貿易摩擦は和らいできたが、米国は中国の輸入全体の約3分の2に当たる3600億ドル規模の中国製品への関税を維持している。
米国は欧州連合(EU)やブラジル、アルゼンチンなど他の貿易相手国とも対立している。自国通貨を切り下げ米製造業者が不当な競争にさらされていると主張している。
政治的に問題になることが多い対中貿易赤字は12月に6.0%減の247億9300万ドルだった。輸入が7.7%、輸出が12.2%それぞれ減少した。19年全体の赤字は17.6%減の3456億1700万ドルだった。
一方メキシコとの貿易赤字は19年に過去最高額の1017億5200万ドルとなった。EUとの赤字額も過去最高の1778億6600万ドルだった。
インフレ調整後のモノの貿易赤字は12月に42億7300万ドル増の804億7200万ドルだった。
貿易は第4・四半期GDPを1.5%ポイント近く押し上げ、寄与度は米経済の3分の2以上を占める個人消費のプラス1.20%ポイントを上回った。第4・四半期GDPは年率で2.1%増だった。第3・四半期も同じペースで伸びた。19年のGDPは2.3%増と3年ぶりの弱い伸びだった。18年は2.9%増加していた。
12月はモノの輸入が3.2%増の2074億6400万ドルだった。前月まで3カ月連続で減っていた。12月は原油輸入が17億4700万ドル増加したことが全体を押し上げた。原油の輸入が増えたことで産業用資材と原料の輸入額は39億7300万ドル増えた。その他のモノの輸入も11億8700万ドル増えた。
19年9月1日に発効した1100億ドル規模の中国製品への15%の関税が11月までの輸入を押し下げていたとエコノミストは指摘する。米中が第1段階の合意で関税を撤廃するとの見通しから19年末は企業が輸入を保留した可能性もあると述べる。
モノの輸出は12月に0.9%増の1377億4900万ドルだった。原油が15億4300万ドル、その他のモノが9億9600万ドル増えた。石油は170億7600万ドルと過去最高水準をつけた。一方、自動車・同部品は10億4000万ドル減の123億7000万ドルと、16年11月以来の低水準だった。