ホームセンター(HC)の市場規模は4兆円。コロナ特需の反動減で市場規模は縮小傾向にある。主要HCの2023年の月次動向を見ると、既存店前年割れの月が大半を占めている。主要HCでは23年度第3四半期(3Q)累計で減収となった企業が多く、通期業績予想を下方修正する企業も目立った。
2023年度3Q決算、主要HCではコーナン商事のみ増収
『ダイヤモンド・ホームセンター』誌の調べによれば、HCの市場規模は、コロナ禍での巣ごもり需要の追い風を受けた2020年度に4兆2686億円となり、同誌調査開始以来、初めて4兆円を突破した。21年度はコロナ特需の反動減により4兆1360億円に減少、反動減2年目の22年度はかろうじて4兆円を維持したものの、コロナ前の規模に逆戻りをしている。
23年度はどうなっただろうか。調査対象は異なるが、経済産業省の商業動態統計では23年のHC商品販売額は前年比横ばいで推移した。そのなかで、ペット・ペット用品は20年の実績を上回り、過去最大の販売実績になっている。
しかしながら主要HC企業の23年の月次実績を見ていくと、既存店前年割れの月が多くを占めている。天候不順などもあり、客数の前年割れは長期に続いている。全店ベースでも、年間を通して前年同月を上回っていたのはコーナン商事(大阪府)のみだ。
主要HCの23年度3Q累計の売上動向を見てみると、コメリ(新潟県)、アークランズ(新潟県)、ナフコ(福岡県)が売上高で前年同期を下回った。DCMホールディングス(東京都:以下、DCMHD)は前年同期比1.1%増となっているものの、前年に子会社化した家電EC最大手のエクスプライス(東京都)分を除くと3.5%減となっており、増収となったのは実質的にはコーナン商事のみという状況だった。通期業績予想については、コーナン商事を除く売上上位4社が下方修正している。
DCMHDは23年12月、ケーヨー(千葉県)を連結子会社化したが、3Q決算公表時点で、売上高、営業利益ともに、期初に公表していた通期業績予想数値を下方修正した。
コーナン商事は24年2月期も積極出店を継続し、2月末までに国内28店舗(うちプロショップ20店舗)を新規出店した。また、23年9月からドラッグストアのキリン堂(大阪府)とプライベートブランド(PB)商品の相互供給を開始している。連結ベースで24年2月期の売上高は7.2%増の4704億円を見込んでいる。
アークランズの3Q決算は、ホームセンター部門の売上高および営業収入は2.4%減の1866億円。3月決算のコメリ(新潟県)は3Qで連結営業収益が2.3%減の2900億円だった。
HC業界トップのカインズ(埼玉県)は非上場のため期中の状況は明らかではないが、23年6月に新宿に初出店(ハンズ新宿店内)、11月には九州北部を中心に展開するHC、グッデイ(福岡県)にオリジナル商品を供給することを発表した。
異業種と積極的に提携する最大手カインズ
間もなく、HC企業の23年度決算が発表になる。コロナ禍以降、4兆円規模を維持してきたHC市場に変化があるのだろうか。各社の決算発表の前に、22年度決算での売上ランキングはどうなっていたのか振り返っておこう。
2022年度のHC企業は、コロナ特需の反動減に加え、急激な物価高や円安、エネルギー価格の高騰に苦しんだ。そうしたなかでも、積極的な出店や業界を超えたM&A(合併・買収)などにより、売上を伸長させたHC企業があった。
売上高首位のカインズは、23年2月期売上高は初の5000億円超えとなる5150億円(6.7%増)。22年3月に東急ハンズ(東京都:現ハンズ)を買収。異業種との提携も積極的に行っており、22年5月には広告・Webサイト制作などを手がけるカヤック(神奈川県)、12月にはプライステックのハルモニア(東京都)とそれぞれ資本業務提携を結んだ。
2位のDCMHDは23年2月期の売上高が4768億円。新収益認識基準適用のため前期との比較はないが、新基準適用前の数値で比較すると10.4%増になる。22年3月に完全子会社化したエクスプライスの業績が寄与したほか、PB「DCMブランド」の取り扱いを約3万1000SKUに拡大し、資本業務提携を結ぶHCのカンセキ(栃木県)などにも提供を始めた。
3位のコーナン商事の23年2月期の売上高は3889億円(新収益認識基準適用のため、前期との比較はなし)。23年2月期は積極的な出店により、プロ業態を含む37店舗をオープン(3店舗を閉店)。23年6月には、九州エリアで食品スーパーとHCを併設した「スーパーコンボ」を41店舗展開するホームインプルーブメントひろせ(大分県)を完全子会社化した。