中国の8月鉱工業生産、8カ月ぶり高い伸び 小売売上高は今年初の増加
[北京 15日 ロイター] – 中国国家統計局が15日に発表した8月の鉱工業生産は8カ月ぶりの高い伸びを記録し、小売売上高は今年初めてのプラスとなった。新型コロナウイルス危機からの景気回復がより広い範囲で進展していることが示された。
1─8月の固定資産投資も政府の刺激策などに支えられて減少幅が縮小した。ただ、米中間の緊張など対外的なリスクが高まる中、当局者は今後の見通しについて慎重な姿勢を崩していない。
鉱工業生産は前年同月比5.6%増加し、5カ月連続のプラスとなった。伸び率は8カ月ぶりの大きさで、アナリスト予想の5.1%を上回った。7月は4.8%増だった。
8月の小売売上高は前年比0.5%増と、今年初めてのプラスとなった。アナリスト予想は横ばい、7月は1.1%減だった。
8月は自動車販売が前年比11.8%増。通信機器の販売は同25.1%増だった。
繰延需要、政府の刺激策、底堅い輸出を背景に中国の回復は勢いを増している。
1─8月の固定資産投資は前年同期比0.3%減でマイナス幅は1─7月の1.6%から縮小した。市場予想は0.4%減だった。
1─8月の民間部門の固定資産投資は前年比2.8%減。1─7月は同5.7%減だった。民間部門の固定資産投資は、投資全体の60%を占める。
8月の不動産投資は前年比11.8%増と、16カ月ぶりの高い伸びを記録した。
コモディティ部門では、建設関連の旺盛な需要や自動車販売の回復を受け粗鋼・アルミニウムの生産が過去最高となった。
ノムラの中国担当チーフエコノミスト、陸挺氏は顧客向けノートで「強い外需、パンデミックからのさらなる回復、洪水の影響で蓄積された需要が8月の活発な活動に寄与した。サービス・セクターは緩やかながらさらに回復し、小売り売上高は安定的に回復、固定資産投資は高い伸びを予想する」と述べた。
オックスフォード・エコノミクスのルイス・クイジス氏は「強固な投資の伸び、段階的に回復している消費モメンタム、底堅い輸出を背景に中国経済の回復はかなりしっかりした足取りとなっており、第4・四半期を通じ2021年にかけて回復が続くとわれわれは考えている」と述べた。
一連の指標を好感し中国株は上昇、人民元は16カ月ぶり高値を付けた。
回復にリスクも
貿易統計や物価統計、製造業関連など最近の経済指標はいずれも、工業部門や経済全体の一段の回復を示唆している。政府のコロナ感染抑制策がおおむね成功したことが回復の勢いを支えているが、当局の景気刺激策も重要なけん引役となっている。
先週発表の8月の貿易統計では、輸出が2019年3月以来の大幅な増加となり、8月の生産者物価指数(PPI)は過去5カ月で最も小幅な低下にとどまった。
ノムラの陸氏は、第2・四半期が前年比3.2%増だった国内総生産(GDP)が第3・四半期は5.2%増に、第4・四半期は5.7%増に伸びが加速すると予想。
ANZのアナリストは2020年の成長率予想を2.1%に引き上げた。ただそれでも1976年以来の低成長となる。
一部のアナリストは回復が停滞する可能性を懸念。米中間の緊張の高まりが打撃になると見込まれるためで、多くは11月の米大統領選を控えて緊張がさらに高まる可能性があると予想している。
オックスフォード・エコノミクスのクイジス氏は「財政・金融政策による刺激策は引き続き回復を後押しするだろう。しかし、信用の伸びが第4・四半期に鈍化する中、刺激策の効果は幾分減退するとわれわれは見込んでいる」と述べた。
中国国家統計局の報道官は15日の記者会見で、なお脆弱な消費や対外リスクの高まりを考慮すると、足元の景気回復は依然として不安定だと指摘。「対外的には引き続き多くの不安定、不確実要素がある。国内では経済回復の過程で一部の産業や企業がなお困難に直面しており、回復は不安定だ」と述べた。
中国はまた、自国を発展させるうえで海外市場への依存度を下げようとしている。さらに、冬季における新型コロナウイルス感染拡大再発の可能性なども多くの投資家が先行きに不安を抱く要因となっている。