[東京 23日 ロイター] – キヤノンは23日、2020年12月期の連結業績予想(米国基準)を未定にすると発表した。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で、合理的な予想の算定は困難と判断した。従来は当期利益予想を1600億円としていた。リフィニティブがまとめたアナリストによる当期利益予想の平均は1367億円。 同社の田中稔三副社長は、新型コロナの拡散によって「世界経済の様相が一変した」と説明した。終息時期の見通しは立っておらず、第2・四半期以降について「深刻な景気後退に陥るとみている」と述べた。同社の事業は、消費マインドの減退や販売活動の制限による影響が世界的に広がるとし、1―3月期より影響が大きくなることが懸念されるとした。
「これまでにない逆風の中だが、正念場の一年と位置続け、キャッシュフロー経営を徹底して難局を乗り越えたい」とした。外部環境のさらなる悪化を想定し、経費削減や設備投資の抑制、在庫削減などで資金を捻出し「キャッシュフローを優先して不測の事態に備える」(田中副社長)との意向を示した。現預金の期末残高は4399億円。
アジアを中心に遅延していた複合機やレーザープリンターの生産は、ほぼ通常の状態に回復しているという。ただ、オフィス業務の制限が続いているため、販売に大きな影響が予想されるという。
嗜好品とされるカメラは、コロナ終息後も「回復には時間がかかる」(田中副社長)とみており、プロ向けモデルに注力する方針。インクジェットプリンターは在宅勤務など向けの特需で一時的に伸びているが、新興国の景気が減速する見込みで年間では減少を想定する。
事業活動の制限でメディカル関連は「受注停滞の影響を年内で全てカバーするのは困難」(田中副社長)だが、中長期的な成長を見据えて商品力・販売体制の強化を進めるという。有機EL蒸着装置とフラットパネルディスプレイ露光装置は、渡航制限などで設置が遅れ、年内の挽回は難しいとみているが、終息後の作業再開が迅速にできるよう準備し、年間の影響を最小限に抑えるとした。
田中副社長は、新型コロナ終息後への備えについて「ウルトラCの対策があるわけではない」と指摘。同社は昨年にかけて構造改革を進めたが「必要なところは、さらに追加の対応をすることで各所が動き始めている」と説明した。従業員の勤務状況は研究職などの1割程度が出勤している以外は在宅勤務や休職とし、政府が要請する出勤者の7─8割減は「十分にクリアしている」とした。
2020年1―3月期の当期利益は前年同期比30%減の219億円だった。田中副社長は「まさに新型コロナに振り回された四半期だった」と総括。売上高は同9.5%減の7823億円。減収の60%がコロナの影響だとし、コロナがなければ営業利益は30%増だったと説明した。営業利益は同18.7%減の328億円だった。
新型コロナの流行当初は中国のオフィス機器やカメラ生産拠点の操業が停止。サプライチェーンの混乱で日本やアジアの工場の稼働率が低下。中国から欧米へと感染が拡大する中で販売にも影響した。