「和食さと」の全国出店とグルメ寿司の海外展開に本腰! SRSホールディングスの成長戦略

構成:松岡 由希子 (フリーランスライター)
聞き手:雪元 史章 (ダイヤモンド・チェーンストア 編集長)

「和食さと」と「グルメ寿司」業態の2つの柱に

――26年3月期から始まった新中期経営計画「SRS VISION 2030」には、どのような思いが込められていますか。

重里 当社は創業以来、「食を通じて社会に貢献する」という理念のもと、誰もが気軽に利用できる飲食業のあり方を追求してきました。日本の誰もが気軽に足を運べるレストランを増やしていくことこそが、私たちにできる社会貢献だと信じています。

 ただ現状では、店舗の約6割が地盤である関西エリアに集中しており、今後の成長にはエリアの拡大が不可欠です。そうした課題認識のもと、「SRS VISION 2030」では、「この5年間で、関西だけでなく日本中の皆さまに愛されるレストラングループになろう」という強い決意を込め、「心を満たす和食を、もっと身近に、日本中の人々へ。そして世界へ。」というスローガンを掲げました。

 重点戦略の第一は、「和食さと」のナショナルブランド化です。家族や仲間と過ごす「団らん」の価値をさらに高める進化を図りながら、商勢圏を広げていきます。

 もう一つの戦略の柱は、価格帯が高めでより高級なネタを提供する「グルメ寿司」業態の強化です。247月、東北エリアを中心に「うまい鮨勘」などを展開するアミノ(宮城県/上野敏史社長)をグループ化しました。すでに展開している「にぎり長次郎」とあわせて、東西両軸でのエリア拡大を進め、グルメ寿司チェーンで圧倒的ナンバーワンの地位を築いていく考えです。

東北エリアを中心に展開する「うまい鮨勘」

――「和食さと」のナショナルブランド化は、どのように進めていきますか。

重里 256月には岡山県内に第一号店の「倉敷東富井店」(岡山県倉敷市)を開店し、ついに中国地方へ進出しました。今後5年間で合計40店舗の出店を予定しており、中四国エリアや北関東エリアでの拡大に加えて、既存のドミナントエリアでも着実に店舗数を増やしながら、本州全体に「和食さと」の店舗網を広げていく計画です。

25年6月にオープンした岡山県内第一号店の「倉敷東富井店」

 あわせて、「和食さと」が持つ本質的な価値をより鮮明に打ち出していきます。とくに重視しているのが、外食だからこそ生まれる「団らん」の場を提供するというブランドの役割です。「ご家族や親しい人と安心して楽しい時間を過ごせる空間とは何か」という問いに正面から向き合いながら、店舗のあり方を見直しています。

 現在は、そうした「団らん」の価値を体現する新たな店舗モデルを検討しており、具体的には263月期中に披露できるよう準備を進めています。

――グルメ寿司業態の成長性について、どのように評価されていますか。

重里 近年、寿司業界全体においても価格の見直しが進んでいます。低価格帯の寿司チェーンですら、原材料や人件費などのコスト上昇に直面し、単なる低価格路線の維持が困難になっており、付加価値型へのシフトを余儀なくされつつあります。

 その一方で、外食の価値は「価格」だけでなく、「体験」にもあるという点が重要になってきています。とくに寿司のような業態では、店の雰囲気や職人の存在感といった要素が、来店の動機になり得ます。「にぎり長次郎」や「うまい鮨勘」は、良質なネタを使い、職人レベルに教育されたスタッフが一貫ずつを丁寧に握るスタイルを貫いており、そこに明確な付加価値があります。

「うまい鮨堪」同様に、クオリティの高い寿司・一品料理を提供することをめざす「にぎり長次郎」

 低価格帯チェーンの価格が上昇するなか、グルメ寿司業態のもつ「質」へのこだわりが、よりお客さまに評価されやすくなってきており、大きな成長の機会があると見ています。

 私たちは現在、職人の手による握り寿司と、効率的なオペレーションの両立を図る新たなプロトタイプを開発中です。既存の回転レーンを進化させ、自動配膳システムを組み込むことで、職人が握った寿司をスピーディにお客さまの席に届ける仕組みです。263月期中には、「にぎり長次郎」と「うまい鮨勘」の両ブランドで順次導入していく予定です。

 

1 2 3 4

構成

松岡 由希子 / フリーランスライター

米国MBA 取得後、スタートアップの支援や経営戦略の立案などの実務経験を経て、2008年、ジャーナリストに転身。食を取り巻く技術革新や次世代ビジネスの動向をグローバルな視点で追う。

聞き手

雪元 史章 / ダイヤモンド・チェーンストア 編集長

1987年石川県生まれ・東京都育ち。上智大学外国語学部(スペイン語専攻)卒業後、運輸・交通系の出版社を経て2015年ダイヤモンド・フリードマン社(現 ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。編集記者、副編集長を経て25年4月より雑誌ダイヤモンド・チェーンストアおよびダイヤモンド・チェーンストアオンライン編集長。

これまで、企業特集(トライアルカンパニー、大創産業、クスリのアオキ、万代など)、エリア調査・ストアコンパリゾン、ドラッグストアの食品戦略、海外小売市場などを主に担当。好きな食べ物はケバブとスペイン料理。趣味は無計画な旅行とサウナ。最近は年齢相応(?)にランニングにハマり、フルマラソンも完走。

関連記事ランキング

関連キーワードの記事を探す

© 2025 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態