「和食さと」の全国出店とグルメ寿司の海外展開に本腰! SRSホールディングスの成長戦略
「SRSピラミッド」でブランド戦略を再構築
――厳しい経営環境が続く中で、25年3月期は売上高・営業利益ともに過去最高を更新しました。好調の要因をどのように分析していますか。
重里 コロナ禍を機に、経営資源の再配分を大胆に見直しました。不採算部門からは早期に撤退し、採算の合わない店舗については閉店もしくは業態転換を進めることで、収益性の高い事業や店舗に集中できる体制を整えました。こうした意思決定をいち早く実行できたことが、業績の回復と成長につながったと考えています。
また、コロナ前からDX(デジタル・トランスフォーメーション)に着手していた点も大きいです。ロボットの導入や発注業務の自動化など、省人化・省力化を進めたことで、昨今の人件費上昇にもある程度柔軟に対応できるオペレーション体制が整いつつあります。
加えて、近年進んでいる中食と外食のボーダーレス化を早期に見越し、「外食だからこそ提供できる価値とは何か」を見つめ直しました。価格帯と店舗数のバランスを基軸に設計した「SRSピラミッド」によって事業ポートフォリオを再編し、ブランドごとの役割を明確化しました。

具体的には、中高価格帯のグルメ寿司業態「にぎり長次郎」や、中価格帯の「和食さと」を軸に、外食をちょっとしたご褒美とする「ちょいハレ」需要と、日常的に利用される1000円前後の「日常食」需要という、2つの消費シーンを意識した展開を進めてきました。こうした明確なターゲティングとブランド戦略や先述の各種取り組みが、業績に寄与したと手応えを感じています。
――中食・外食を問わず、食の価格が全体的に上昇するなかで、とくに「ちょいハレ」は今後の成長におけるカギになりそうです。
重里 そうですね。外食と中食の境界がますます曖昧になるなかで、私たち外食事業者は「中食では代替できない価値」を提供していく必要があると考えています。
たとえば、料理を楽しむ場としてのエンターテインメント性や、空間・サービスを含めた非日常性、そしてQ(Quality:品質)・S(Service:サービス)・C(Cleanliness:清潔さ)といったトータルの体験価値などは中食ではなかなか表現できない、外食ならではの魅力です。
だからこそ、「ちょいハレ」需要、つまり“ちょっとしたご褒美”や“気分転換”としての外食需要に、どう応えていくかが重要になります。単にお腹を満たすだけでなく、「あのお店に行きたい」「外で食べたい」と感じてもらえる体験をつくる。それが、価格が上がる局面においてもお客さまに選ばれる理由になると信じています。








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