もっと“イカす”企業に！ アクシアル リテイリング原和彦社長が語る成長戦略
新潟県の食品スーパー（SM）の競争環境が激変の兆しを見せている。強烈な低価格を武器に、全国で商勢圏を拡大中の「ロピア」の新潟1号店が2025年5月にオープン。今秋には早くも2号店が開店予定だ。
競争激化待ったなしの状況下、アクシアル リテイリング（新潟県）では、「おいしさ」を追求した政策を推進。インフレ下でも着実に成長を続けている。今年度の戦略を原和彦社長に聞いた。
増収増益の2024年度好業績を支えたのは
──2025年3月期（24年度）の通期決算は増収増益となりました。
原 値上げ基調の中でコメや野菜が値上がりし、24年はとくに秋以降、売上が堅調に推移しました。利益面では、かねて進めているEDLP（エブリデー・ロープライス）政策が支持されたのに加え、商品開発が活気づき、これまでになかった新しい提案をできるようになったことも増益に寄与しました。ウィークリーマネジメントのような、基本的なマネジメントの精度がこの数年でかなり上がってきたのも増益要因のひとつと見ています。
とくに店舗のマネジメントレベルはこの2～3年で大きく向上しました。インストアマーチャンダイジングの考え方に対する理解が進み、売上高・粗利益高の最大化を意識しながら、メリハリのある売場づくりができるようになってきました。総菜を中心にロス管理のレベルも上がり、利益の底上げにつながっています。
──商品開発という点では、24年10月に新本部が開設され、開発機能が大きく拡充されています。
原 新本部には、安全・安心を前提においしさを追求することを目的に、店舗と同じ設備を備えたテストキッチン「MD.lab」、家庭の台所を再現した「はらナルキッチン」、ベンチマークに対するおいしさを科学的に評価する「官能評価室」、チラシやウェブ媒体向けの商品画像を撮影する「撮影室」などを設置しています。商品開発から販促までのプロセス、それらに関わる部門が新本部に集約され、全体のコミュニケーションが非常によくなっています。
節約志向高まる中で「おいしさ」の追求に注力
──商品政策では、どのようなことに注力していますか。
原 24年度はインフレ基調を見越し、「原価が上がるフェーズではあるものの、よりおいしいものを提供しよう」という思いを込めて、「おいしさがドまん中大作戦!!」というグループ年度方針を掲げました。適正な価格、利益水準をめざしながらも、決して品質をないがしろにしないという考えのもと、商品・サービスの磨き込みに力を注いできました。
また、3シーズン先を見据えて商品企画に取り組む「おいしさ企画化計画」も整備しました。計画を見える化し、毎週、商品部内の会議で商品ごとに進捗度合いをチェックすることで抜けもれが少なくなり、商品開発の精度とスピードが想定以上に上がっています。
そのほか24年4月には、総菜などの製造加工を担うローリー（新潟県／宮路光広社長）のデリカセンターが本格稼働しました。25年度は総菜を含めてさまざまな開発にチャレンジしていきます。
──23年に立ち上げた社会課題対応型のプライベートブランド（PB）「Hana-well（ハナウェル）」の手応えはいかがですか。
原 ハナウェルの取り扱い品目数は約160品目に増え、売上も伸びています。「社会課題への対応と事業活動の一体化」というブランドの意義をお客さまに伝えるべく、開発を進めています。
ただ、ブランド認知度は徐々に高まっているものの、
聞き手
1987年石川県生まれ・東京都育ち。上智大学外国語学部（スペイン語専攻）卒業後、運輸・交通系の出版社を経て2015年ダイヤモンド・フリードマン社（現 ダイヤモンド・リテイルメディア）入社。編集記者、副編集長を経て25年4月より雑誌ダイヤモンド・チェーンストアおよびダイヤモンド・チェーンストアオンライン編集長。
これまで、企業特集（トライアルカンパニー、大創産業、クスリのアオキ、万代など）、エリア調査・ストアコンパリゾン、ドラッグストアの食品戦略、海外小売市場などを主に担当。好きな食べ物はケバブとスペイン料理。趣味は無計画な旅行とサウナ。最近は年齢相応（？）にランニングにハマり、フルマラソンも完走。
構成
米国MBA 取得後、スタートアップの支援や経営戦略の立案などの実務経験を経て、2008年、ジャーナリストに転身。食を取り巻く技術革新や次世代ビジネスの動向をグローバルな視点で追う。
「おいしさ」のあくなき追求……原信・ナルスの青果戦略を徹底解剖！
