ユニクロ柳井正会長が「世界は可能性に満ちている」と語る真意
「ユニクロに学ぶサステナビリティ」と題して、今年5月から始まったこの連載も、いよいよ今週の掲載で最終回を迎える。最終回は、創業社長である柳井正会長に話を聞いた。サステナビリティというテーマを超え、企業として、小売業として、また一個人として、これからの世界をどう生きていくべきか、という示唆に富んだメッセージである。
服が持つ意味が変わった
日本はもちろんのこと、いま世界中で、服に対する価値観が大きく変わりつつあります
服の成り立ちを考えると、太古の昔、服は暑さ寒さや外敵から身を守るため、生存するために必要なものでした。その後、身分やステータスを表すものになって、それから人に会うための服みたいなものになり、やがてファッションになっていったわけです。
しかし、いま必要とされている服は、「ファッションとしての服」や「着飾るための服」からさらに変わり、「上質な生活のための高品質な服」になってきました。
このお客様の意識の変化をとらえて、それに合わせて我々の事業を変えたいと思い、「本当にいい服」「新しい価値を持つ服」とはどういう服なのかということについて考えてきました。そして辿り着いたのが「LifeWear」というコンセプトです。
「LifeWear」とは、国籍や年齢、性別、職業などの人を区別しているものを超えた、あらゆる人々のための服です。それは日常生活に役立つ究極の普段着であり、アパレルの業界用語を使うなら、リアルクロージングの本当にいいものということになると思います。
LifeWearとは新しい産業
ナイキやアディダスが「スポーツウェア」を作ったように、我々は「LifeWear」という産業を作ろうと考えています。
「ファストファッション」「カジュアルウェア」「スポーツウェア」といったカテゴリー自体が、もう今の時代に合わないのではないでしょうか。今のお客様が求めている服の要素は、そういった従来のカテゴリーではなく、「生活に密着していて本当に良い服」「新しい価値を持った服」だと気づきました。服の立ち位置を変えて考えたわけです。
我々ができるのは、そういった今の時代に合わせた服を提供すること、お客様の要望に応えてその服を作り変えていくこと、そして、それを売場でのサービスをもって提供することです。服のカテゴリーだけでなく、我々の業態自体をそのような形に変えたいと考えたのです。
我々が提供する服は、10年前でも今年でも変わりません。僕が今日着ているユニクロのジャケットは7990円、パンツは3990円、シャツは2990円です。でも、そう見えないでしょう? このジャケットは3万円、パンツは1万円と言っても通用すると思います。服に対する価値観を、僕たちは変えたのではないかなと思います。
ユニクロに学ぶサステナビリティ の新着記事
-
2023/09/19
ユニクロ柳井正会長が「世界は可能性に満ちている」と語る真意 -
2023/09/18
ユニクロ柳井正会長が語る 企業のサステナビリティの本質とは -
2023/09/13
キャシー松井氏に聞く ビジネスを拡大し続けるためにユニクロが取り組むD&I -
2023/09/12
ユニクロが実践、なぜダイバーシティの推進がイノベーションを生み出すのか? -
2023/09/11
障がい者の雇用と女性活躍の推進から始まったユニクロのダイバーシティ -
2023/09/04
服に愛着を生む リ・ユニクロスタジオのリペア&リメイクサービスとは
この連載の一覧はこちら [28記事]
ファーストリテイリング(ユニクロ)の記事ランキング
- 2024-09-03アローズにビームス…セレクトショップの未来とめざすべき新ビジネスとは
- 2023-08-28ユニクロと東レとのサステナブルな関係から生まれたリサイクルダウン
- 2024-01-02勝ち組はSPAではなく「無在庫型」へ 2024年のアパレル、5つの受け入れ難い真実とは
- 2021-03-05ビジネスは「一勝九敗」 ファーストリテイリングを世界的大企業に導いた“柳井哲学”
- 2024-11-16ファストリが3兆円突破!24年8月期決算で語られた今後の成長戦略
- 2021-05-04大丸、三越伊勢丹…誰も語れない百貨店分析 政府の施策が百貨店を殺す「本質的理由」
- 2021-05-18全産業中ワースト2位の不都合な真実、アパレル業界の環境破壊と人権問題を解決する方法
- 2022-01-11ZARAとユニクロだけがなぜ余剰在庫を撲滅できるのか?本人達も気づいていないメカニズムとは
- 2022-05-03ユニクロ独走の秘密は販管費にあるのに、原価削減を繰り返すアパレルの実態とは
- 2024-08-27好調アパレルに異変?在庫回転率悪化の複数要因とファストリ改善の理由
関連記事ランキング
- 2024-09-03アローズにビームス…セレクトショップの未来とめざすべき新ビジネスとは
- 2023-08-28ユニクロと東レとのサステナブルな関係から生まれたリサイクルダウン
- 2024-01-02勝ち組はSPAではなく「無在庫型」へ 2024年のアパレル、5つの受け入れ難い真実とは
- 2021-03-05ビジネスは「一勝九敗」 ファーストリテイリングを世界的大企業に導いた“柳井哲学”
- 2024-11-16ファストリが3兆円突破!24年8月期決算で語られた今後の成長戦略
- 2021-05-04大丸、三越伊勢丹…誰も語れない百貨店分析 政府の施策が百貨店を殺す「本質的理由」
- 2021-05-18全産業中ワースト2位の不都合な真実、アパレル業界の環境破壊と人権問題を解決する方法
- 2022-01-11ZARAとユニクロだけがなぜ余剰在庫を撲滅できるのか?本人達も気づいていないメカニズムとは
- 2022-05-03ユニクロ独走の秘密は販管費にあるのに、原価削減を繰り返すアパレルの実態とは
- 2024-08-27好調アパレルに異変?在庫回転率悪化の複数要因とファストリ改善の理由