服に愛着を生む リ・ユニクロスタジオのリペア&リメイクサービスとは
ドイツから始まった、RE.UNIQLO STUDIO
「RE.UNIQLO STUDIO」の原型となるリぺアサービスは、2021年8月、ドイツの「タウエンツィーン店」で始まった。当時、ドイツのサステナビリティ部のスタッフが、服を長く着る取り組みをしているNGOと一緒に、服を修理、リメイクするワークショップを行っていたのが始まりだ。
たった1店舗で行ったワークショップだが、その情報が社内に共有されると、全世界のユニクロに波及効果があり、翌年にはニューヨークのSOHOにある店舗で有料のリペアサービスを開始した。
2022年4月にロンドンのリージェントストリートに旗艦店舗がオープンした際にも、リペアとリメイクサービスのコーナーは、目玉コンテンツとなった。当時ロンドンで、日本の伝統的な刺繍の手法である「刺し子」が流行り始めており、それも手伝って注目を集めた。
「元々、日本の刺し子という刺繍の手法には、古くなった作業着などをお金をかけずに補強して長く着ようという、生活の中で生まれたサステナビリティの思想があり、その考え方がヨーロッパで注目され始めていたんです。日本の伝統の技術とサステナビリティ、だったらユニクロがやるしかないんじゃないか、と思いました」(花田氏)
ドイツの個店の施策だった活動が、SOHO、ロンドン……と広がっていくというのが、グローバルに展開するユニクロのダイナミズムだろう。その後、世界各地でそれぞれ行っていたリペアサービスをフォーマット化して、お客に提供できるようにするため、2022年9月に「RE.UNIQLO STUDIO」としてブランディングした。
「欧米では、Right to repair(修理する権利)ということが重要視され、お客様が自分の判断で商品を修理できるよう、企業がサポートや情報を提供することが法律化され始めています。もちろん、車や家電の方が進んでいるのですが、ユニクロでは服でも同様に対応していきたいと考えています」(花田氏)
日本では、ユニクロ世田谷千歳台からスタート
日本では、2022年10月に世田谷千歳台店に初めて「RE.UNIQLO STUDIO」ができた。当初は2023年3月いっぱいまでの期間限定のサービスとして始まったが、利用者も多く好評だったため、常設することが決まった。
「世田谷千歳台店は、都内の大型店でありながら、地元密着型のロードサイド店で、ユニクロの中では珍しい立地にあります。日本でもトップに入るくらいリサイクルの回収量が多い店舗で、お客様も着なくなった服を持ってくる行動が根付いていたため、まずこの店舗から始めました」(花田氏)
前提として、ユニクロでは従来から店舗でジーンズなどパンツ類の裾上げなど、ミシンを使った補正作業を行っていたという背景がある。そのため、ユニクロの店舗には補正のインフラと技術があり、スタッフにも、その場で服を補正すること自体には抵抗がなかった。店長に打診した時も、二つ返事で「自店でやります!」と言ってくれたという。
始めてみると、予想以上に大きく破損したものが持ち込まれることがわかった。たとえば握りこぶしほどの大きな穴が開いたニットや、手の平ほどの大きさの穴が複数あいたジーンズなど。ここまでボロボロになったものを本当に修理してまで着るのだろうか?と思うようなものもあった。
「でもスタッフたちは、どんな商品が持ち込まれても、まったく躊躇せず、こういうお客様がいらっしゃるので次はこうしよう、と、どんどん積極的にオペレーションを考えていってくれたんです。たとえば、ジーンズの穴は同時に複数か所あいていることが多いので、2か所以上の場合は値引きしよう、とか」(花田氏)
世田谷千歳台店の期間限定サービスの目的は、なるべくたくさんのケースのデータを集め、お客の声を吸い上げ、全国の店舗に広げていくフォーマットを作ることにあった。店舗スタッフも、その目的を十分に理解していたのだろう。
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