アスリートと取り組む次世代育成 #1 ユニクロのグローバルブランドアンバサダーとは
ユニクロは、世界レベルで活躍するアスリートたちと、ブランドを体現する「グローバルブランドアンバサダー」として契約している。現在のグローバルブランドアンバサダーは、車いすテニスの国枝慎吾選手、ゴードン・リード選手、テニスの錦織圭選手、ロジャー・フェデラー選手、ゴルフのアダム・スコット選手、そしてスノーボードとスケートボードの平野歩夢選手の6人だ。特筆すべきは、彼らの競技活動をサポートするだけでなく、選手たちと一緒に社会貢献活動、とくに次世代の選手を育成する活動に力を入れていることだ。スポーツプロジェクトを担当するユニクロ グローバルマーケティング部部長の文原徹氏に、グローバルブランドアンバサダーについて取材した。
ブランディング、商品開発、次世代育成の3本柱
ユニクロのグローバルブランドアンバサダーとは、「ユニクロが目指す、あらゆる人の生活を、より豊かにするための服『LifeWear』。このコンセプトとユニクロブランドを世界に広めて社会に貢献するために」、ともに活動する「世界の人々からリスペクトと称賛を集める」「人間としての誠実さ、高潔さ、逆境にあっても希望を失わない精神力、他人を尊重する心、謙虚さなど、抜きんでた人格を供えたアスリート」とされている。単なる著名アスリートへの協賛とは、意味合いが違うようである。
一般的なスポーツマーケティングの目的は、言うまでもなく、認知度アップ・イメージアップだ。有名企業がアスリートと契約し、彼らが出演する広告はよく目にする。スポーツプロジェクトを担当するユニクロ グローバルマーケティング部部長の文原徹氏は、ユニクロのグローバルブランドアンバサダーの目的は、「ブランディング」「商品開発」、そして「次世代育成」だと語る。
「スポーツマーケティングの世界においては、スポーツメーカーやスポーツウェアブランドは、当然スポーツを前面にしたメッセージを発していました。ところが、ユニクロはカジュアルウェアのブランドで、『LifeWear』を提唱しています。まったく違う角度から、スポーツをも含めた生活全般に対してメッセージを発信しなくてはならない。入社してから、柳井社長や取締役の柳井康治と議論を重ねて、ユニクロとしてスポーツマーケティングを実施していく上で、従来のブランディングという意味合いに加え、サステナビリティ活動の一環である次世代育成を一つの柱にしていくべきだ、ということになりました。ここが、ユニクロのスポーツマーケティングの大きな特色になっています」(文原氏)
アンバサダー人選の課題
もちろん、「ブランディング」においても、グローバルブランドアンバサダーの果たした貢献度は大きい。
たとえばユニクロブランドがヨーロッパに本格出店するようになったのは2010年以降だが、当時ヨーロッパでは、「ユニクロ」よりも「ロジャー・フェデラー選手」の方が圧倒的に有名だった。すると、彼がユニクロのウェアを着ることによって、ユニクロというブランドが知られるようになっていく。「ロジャー・フェデラー選手が競技の時に着ているウェアだ」とブランドに対する信頼感が増したことは確かだ。そしてアンバサダー等がユニクロの『LifeWear』を体現すべく彼らがそのフィロソフィ(哲学)を伝えていく。
グローバルブランドアンバサダーの人選の基準は何なのだろうか。
「まず、競技のジャンルは、これまでもテニスウェアやゴルフウェアを選手に提供しているように、我々のウェアを競技中に着用できる競技だということです。そのうえで、そのジャンルの中で世界のトップレベルで活躍している選手だということ。そして、これが一番重要なのですが、競技面だけではなくて人格の面で、誰もが尊敬する人間性の素晴らしさ、精神力の高さを持たれている方だということ。前人未踏の記録に挑戦し続ける選手は、こうした精神力の高さを兼ね備えています」(文原氏)
「新しいアンバサダーにふさわしい方なども常にアンテナを張り探してはいますが、そう簡単に見つかるものでもありません。特に、ダイバーシティ&インクルージョンの観点から、ジェンダーのバランスや人種としての多様性なども考慮すべきだということは理解をしています」(文原氏)
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