ユニクロのサステナビリティ活動22年の歩みと未来 #3 「ドラえもん サステナモード」誕生
「ドラえもん サステナモード」は未来を作るパートナー
マーケティングが上手いと言われるユニクロ、ファーストリテイリングであっても、商品の広告とは違って、サステナビリティについての情報発信は簡単なことではない。「ドラえもん サステナモード」は、その課題を解決するための一つのチャレンジと言える。
この「ドラえもん サステナモード」を生んだのは、マーケティングを統括する遠藤真廣執行役員(以下、遠藤氏)率いるチームだ。
「サステナビリティ活動について、コミュニケーションしていく上で大事にしているのは、一つは難しいことを分かりやすく伝えなくてはいけないということ、もう一つは事実を正しく伝えなければいけないということ。加えて、インパクトも必要ですから、マーケティングとしてはとても難易度が高いと思っています。そこで、それを伝えるアンバサダーがいたらいいなと思って、部内でもずっと議論していました」(遠藤氏)
遠藤氏は、2006年に大手飲料メーカーから中途入社して以来、ユニクロの商品マーケティングを担当してきた。2015年より海外に赴任し、ユニクロがスウェーデンのオリンピック・パラリンピックチームとパートナーシップ契約を結んだ際のマーケティングも担当した。2019年に帰国してからは、主にサステナビリティに関わる情報発信を担当している。
「ある時、チームの若いメンバーから『ドラえもんを使って何かできませんかね?』と言われたんです。それで、アッ!と思った。ドラえもんとユニクロには、親和性や共通点があることに気づいたんですよ。まず、ドラえもんは日本を代表するキャラクターですが、いまや世界に通ずるキャラクターになろうとしている。2つ目に、ドラえもんは子供からも大人まであらゆる人に愛されているということ。3つ目に、ドラえもんは未来から来た猫型ロボットだということ。サステナビリティって僕たちの未来を作る活動だと思うんです。ユニクロと一緒にサステナビリティを語るアンバサダーとして、これ以上の相手はいないと思い、この3つを社内に説明し、提案したんです。しかも、通常のドラえもんとは違う『ドラえもん サステナモード』ができないか、と」(遠藤氏)
この提案には、柳井社長を含め、社内で珍しく一発OKが出た。さっそく小学館と藤子プロに向かい、ドラえもんとユニクロの共通点を説明して「お互いに世界をよくしていきませんか」と伝えると、両者からもすぐに共感してもらえたという。
これが2020年から2021年にかけてのことである。この時期は、コロナ禍のため、ユニクロでもなかなか思うようにマーケティング活動が展開できなかったはずだ。「ドラえもん サステナモード」は、そんな中でも倦まず弛まず、考え抜いたからこそ生まれたスマッシュヒットなのではないかと思う。
次回「第3回 瀬戸内オリーブ基金への支援」は6月9日(金)掲載。ユニクロが22年間取り組んでいる瀬戸内海・豊島でのボランティア活動の軌跡、また支援のきっかけとなった建築家・安藤忠雄氏と柳井社長の交流について取材する。
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