ユニクロのサステナビリティ活動22年の歩みと未来 #1 服屋だからこそできること
2016年、サステナビリティ部に発展
その後、2015年9月の国連サミットでSDGs(2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標)が制定され、環境に対する配慮がより求められていくようになった。それまで「社会貢献」「労働環境」には力を入れてきたが、さらに「環境問題」に対する取り組みにも活動を広げていく必要を感じ、CSR部を「サステナビリティ部」と改名。活動内容はより広がりを見せていく。広範に渡る一つひとつの活動については、この後の連載で紹介していくこととする。
サステナビリティ活動は世界の動きと直結
ちょうど佐藤可士和氏とCSRステートメントを作っている間、シェルバ氏自身も大きく進化するタイミングがあった。
「夢中でやり始めた仕事なんですけれど、気づいたら国連の方とも会えば、難民の方とも会うし、NPOの方たちとも会話するわけです。あらためて自分自身きちんと勉強しないといけないと思うようになったんです。それで2007年から大学院に通って、非営利組織の経営を学び、社会デザイン学のMBAを取りました。3年かかってしまいましたけれど」(シェルバ氏)
国内外の出張も多い仕事を続けながら、平日のノー残業デーと土日を使っての勉強は、相当な努力を要したに違いない。しかしこの大学院で、シェルバ氏は同じような志を持つ仲間たちと出会うことができた。
最も大きな出会いは、大学院の教授が、ノーベル平和賞受賞者であるムハマド・ユヌス氏を紹介してくれたことだ。それをきっかけに、ファーストリテイリングは2010年、ユヌス氏が創設したグラミン銀行グループとともに、バングラデシュでソーシャルビジネスを開始した。もともとバングラデシュは、ファーストリテイリンググループの重要な生産拠点のひとつで、衣料品の製造を基幹産業として経済発展をとげている一方で、貧困や健康管理面の問題などを抱えていた。現地の課題解決に貢献するために、現地で生産した服を現地で販売し、その収益のすべてを事業に再投資するという共同事業だった。
「サステナビリティの仕事は、常に世界の動きとともに変化しています。そして毎日、これが一体、世の中にとってどういう意味があるんだろうと考えています。私は全ての仕事において、そういう視点で臨むべきだと思うんです」(シェルバ氏)
入社以来22年間、サステナビリティ領域一筋。ファーストリテイリングのサステナビリティ活動の歴史は、そのままシェルバ氏の社歴と重なっている。当初2~3人で始めた「社会貢献室」は「サステナビリティ部」に名を変え、いまや世界中で100人を超える組織となった。こういう社員の一人ひとりが、企業の存在意義を作っているのだと思う。
次回、「第2回 ユニクロのサステナビリティ活動22年の歩みと未来 #2 目指すのは新たな事業モデル」は6月3日(土)掲載。ファーストリテイリンググループ上席執行役員の柳井康治氏に、ファーストリテイリンググループの目指す新たな事業モデル図について聞く。
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