食品スーパーから発信するSDGs、ロカボで誰もが健康に暮らせる社会をめざす
また、すき家(東京都/笹川直樹社長)が展開する牛丼チェーン店「すき家」では、22年10月より外食業界初となるロカボプラス認証を受けた「お食事サラダ」2品を販売開始した。その名のとおり、食事になるサラダとして、ワンプレートで満足感と満腹感が得られる商品だ。レタスやブロッコリーなど6種類の野菜に、十六穀米や自家製ベーコンをトッピング。メーン食材は牛肉とチキンの2種類から選べる。いずれも糖質量を抑えながら、たんぱく質も摂取できるのが特長だ。
「健康増進のための食事というと、『おいしくない』『続かない』と思われがちですが、これらの商品は『おいしさと健康はトレードオフ』というイメージを覆しています。おいしいものを我慢せずに、糖質制限を楽しく続けてほしいというわれわれの願いを叶えたもので、ロカボライフを実践するうえで有効な商品といえるでしょう」(山田氏)
料理人とアスリート、新たな切り口でロカボを普及
ロカボの認知が進むなか、食・楽・健康協会ではよりいっそうロカボを普及させるために、新たな切り口での取り組みをスタートさせた。
まずは、料理人と医師が連携することで美食と健康を両立するレストランダイニングをめざすプロジェクト「レキペ アカデミア」だ。
「料理のレシピと医療の処方せんの語源は、実は同じラテン語の『調合』を意味する『レキペ』です。料理人と医師が協力して医食同源を進化させ、新たな美食の世界をつくりたい。そう考えて、『レキペ アカデミア』を立ち上げました」(山田氏)
山田氏の思いに賛同するのは、里山料理のジャンルを築いた第一人者として知られる北沢正和氏ら国内外で名を馳せる料理人たちだ。科学的根拠に基づいた美食を提供することで、料理をつくる人も食べる人も健康になり、医療費削減を実現していく。それがレストランの新たな社会貢献だと山田氏は力を込める。今後は、料理人を対象とした勉強会を開催するほか、旬のものを楽しみながら健康になるという取り組みを、地域と協業しながら実現し、ヘルシーツーリズムにもつなげていく考えだ。
また、アスリートやビジネスパーソンのパフォーマンス向上のために、食後高血糖の啓蒙活動にも積極的に取り組んでいく。
「さまざまな疾病の根底にあるのは食後高血糖です。血糖の上下動が大きければ大きいほど、脳にも筋肉にも悪影響を与えるので、食後高血糖を予防すれば、集中力が途切れることなく、パフォーマンスの最大化が期待できるのです」(山田氏)
ロカボで医療費削減、めざすのは三方よしの社会
ロカボを提唱する山田氏らがめざすのは、おいしく楽しく食べて健康になる社会だ。
「薬に頼るのではなく、食べることで健康になる。それは、ロカボライフを実践すれば可能なことです」(山田氏)
実際、図表①に示すように、白米のみの食事に比べ、白米のほかに木綿豆腐、ゆで卵、マヨネーズ、ほうれん草、ブロッコリーと多種多彩に食べたほうが食後の血糖値は上がらない。糖質さえ控えていれば、アルコールであろうと、デザートであろうと、カロリーを気にする必要はない。
食後血糖値を上げにくくする商品を企業がつくり、それを消費者にとって身近な食品スーパーで売ることで、食べた人が健康になっていく。それは医療費削減につながり、スーパーの売上拡大ももたらす。これぞ売り手も買い手も世の中も幸せになる、三方よしの社会と山田氏は言う。
「今、世界ではSDGsの達成に向けてさまざまな取り組みが加速していますが、ロカボもその一つだととらえています。ロカボライフを実践することで、SDGsの目標3である『誰もが健康で幸せな生活を送れる』ことを達成できる。そう考える私たちは、スーパーから健康な世の中をつくっていきたいと考えています」(山田氏)