マーケティング活動とは別物「マーケティング・マネジメント」で激変時代を乗り切る!
マーケティング・マネジメントが生まれた背景
なぜ欧米小売業がマーケティング・マネジメントに取り組み始めたのか。
日本は約30年前のバブル崩壊を引き金に、経済そのものが大きな転換期を迎えデフレ時代が始まった。バブルは単なる引き金にすぎず、本当に起こっていた問題は、「社会の成熟化で起こっていた消費者ニーズの多様化」であった。これに応えるためにマーケティングは細分化され、複雑なものとなった。このためそれまでの方法では管理しきれなくなり、高コストで非効率になってしまった。
この「社会の成熟化に伴う消費者ニーズの多様化」は日本だけで起こったものではない。市場成長が停滞し先進国の多くがデフレとなり、バリュープライスと呼ぶ低価格とそれを実現するためのローコスト・オペレーションが経営上の大きなテーマとなったのである。
その結果、BPR(ビジネス・プロセス・エンジニアリング)を成功した企業が勝者となった。いわゆるECR推進で、欧米のコンシューマー・ビジネスでは多くの小売業や製造業がこのアプローチに取り組んだ。
ECRではサプライチェーンマネジメント(SCM)の話が取り上げられることが多かったが、欧米の小売業は同時にマーケティング・マネジメントのモデルを構築することで成功を収めた。
成熟化がマーケティング・アプローチの細分化を招き、結果として施策の成功率を低くし、顧客である消費者が求めるものが適切に店頭で提供されなくなっていた。この状況を立て直すために、変化する消費者を理解し自社の販売施策にどうやって適切に反映するかが課題となった。
この課題解決のため、IT技術の進歩によって容易になったデータ活用を実現するプロセス構築が始まり、モデルがつくり上げられた。
大量のデータ分析をサポートする大容量のデータウエアハウス(DWH)とビジネス・インテリジェンス・ツール(当時はOLAPと呼ばれた)が普及したのもこの時期である。さらにWEBなどによりデータ交換が技術的に容易になり、小売とメーカーとの販売施策におけるコラボレーションの実現のためにもお作法となるモデルが必要とされた。
POSレジが1970年代に登場してから、そのデータ活用機会について模索されてきたが、実際に実現するのは90年代に入ってからだ。市場データとの比較による機会分析や、自社の実績評価への活用がマーケティング活動のモデルの中で確立したことによる。IT技術の内容は今とはまったく異なるが、デジタル・トランスフォーメーション(DX)の先駆けである。
その後モデル化されたことが弾みとなり、小売業でのマーケティング活動は広がりを見せ始めた。プライベートブランド(PB)の開発はターゲット顧客に対するポジショニング戦略に基づいて行われ、顧客カード分析と活用や、売場の開発などに広げられ、それを実現した企業が勝ち組となった。