親指サックが30万足の大ヒット! 「タビオ」に学ぶ成果の上がるX運用術とは

編集プロダクション雨輝
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「靴下屋」「Tabio」などの靴下専門店を運営するタビオ(大阪府/越智勝寛社長)のEC売上高が急増している。2019年までのEC売上成長率は対前期比で5%増程度が平均的だったが、20年は同100%まで上昇。ECチャネルの売上構成比率も急増し、20年以降は1213%と安定的な比率で推移している。急成長の主因は、X(旧Twitter)を中心とするSNS運用の成功だ。SNSをどのように利用して売上増につなげたか、また運用するうえで重視している点について、タビオのSNS運用責任者と実際の運用者に話を聞いた。

タビオのX公式アカウント
タビオのX公式アカウント

SNS運用で大切な“信頼貯金”とは

 タビオが運営するXのアカウントは約9.4万人のフォロワーを抱えており(242月時点)、インプレッション(閲覧回数)が数百万回超の投稿をコンスタントに生み出している。タビオがSNS運用を強化しようとしたきっかけは、20年に始まったコロナ禍だった。タビオのマルチメディア企画部部長の栃真賀悠名氏は「緊急事態宣言により店舗の人手が余ったことで、11人の現場社員を集めてSNSを強化する方針を固めた」と述べる。

 運用するうえで11人のトーン&マナー(広告におけるコンセプトや雰囲気)を揃えることはあえてせず、アカウントを運用する「中の人」の個性をそのまま生かす手法を採用した。すると、マルチメディア企画部係長の肩書で現在もSNSを実際に運用する田口裕貴氏の投稿が、徐々に反響を呼び始めた。

 投稿内容について田口氏は「SNS利用者=消費者が日ごろ抱える悩みに応える内容を強く意識した」と話す。たとえば、フォロワーから「足の冷えに困っており、どうすれば解決できるか」という質問が寄せられたケースがある。その際、一般的なメーカーの場合は自社商品を紹介するが、田口氏は「筋トレをしたほうがよい」という回答を、その根拠となる記事URLとともに返している。

 この投稿のインプレッションは280万を超え、リポストは9000超、いいねは14000超を獲得した。こうした消費者ファーストな投稿が話題を呼び、タビオのアカウントはフォロワー数を伸ばしていった。

 田口氏は自身の考えを次のように語る。「足の冷えに悩む方が求めているのは、『どんな靴下を買ったらいいか』ではない。足の冷え対策を解決する有効な手段として、筋トレという対策を発信した。フォロワーに有益な情報を与えることを最優先した投稿を心がけることで、アカウントを信頼してもらえるようになる。これを継続して“信頼貯金”することで、信頼の対象はアカウントからブランドに転換されていく。そうなれば商品紹介の投稿も信頼してもらえ、購入につながる」(田口氏)

 商品紹介が“バズ”ったケースもある。靴下の破損を防ぐ『親指サック』をXで紹介したところ、画期的なアイデアだとして話題になった。それまでは店頭での反響が高いとは言えない商品だったが、投稿が伸びたことで累計30万足出荷のヒットにつながったという。

親指サック
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