無印良品、宿泊・滞在事業を本格展開のねらいとは?

西岡 克(フリーランスライター)

4つの業態をまとめて「MUJI STAY」に統合

 良品計画は24年秋に宿泊・滞在事業を「MUJI STAY」として統合し、体系化した。「地域に溶け込むもうひとつのくらし」をコンセプトに以下4つの事業でポートフォリオを構成している。

  • 08年から手掛け、日本と中国の3カ所(深圳、北京、銀座)で展開している「MUJI HOTEL
  • 地域の遊休資産を活用する現在4施設の「MUJI BASE
  • 既存のホテルや旅館の一部を使った同2施設の「MUJI room
  • 国内3カ所(嬬恋、津南、南乗鞍)で運営するキャンプ場「MUJI Camp」

 めざすのはMUJIのブランド体験が可能なコミュニティ型の中長期滞在だ。

 従来の旅行は、目当ての宿泊施設に出かけ、観光地を訪れて短期的な「非日常体験」を楽しむスタイルが主流だった。一方、MUJI STAYでは、そうしたかたちから脱し、何度も訪れて長く滞在することで、地域の暮らしや、地元の人との交流を通じた体験を提供する場への転換を図っている。そして移住者に頼る「定住人口」でも、観光客に依存する「交流人口」でもない、地域に継続的に関わる「関係人口」をつくり出し、地域の活性化につなげたいのだという。

 背景にあるのは、人口減によって日本各地に遊休地が生まれ、地域の産業・文化が衰退、関係人口をどう増やしていくかが地域の課題として浮上していることだ。またコロナ以降、場所や暮らしにとらわれない生活スタイルが定着し、都心に住まなくても仕事も暮らしもできるようになったこと。さらに、インバウンド需要が回復し、日本らしい地域体験を求める旅行者が増えていることもある。

 

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