データからはまだ見えない“漠然とした危機”を共有する方法
本コラムは「データ分析の重要性を伝えること」を目的に始まりましたが、「データドリブン思考」の普及で、世の中も同じ論調になってきました。そこで、天の邪鬼気質の筆者は今回、「データ分析だけではビジネスはうまくいかない」ことを、事例を通じて指摘したいと思います。
実際、「データで見えたときにはすでに手遅れ」の場合や、「そもそもデータ分析が必要か?」という場面が往々にしてあります。データだけでは測れないし、データにはすぐに表れない「異変」もあります。そこでどう対処するかが、ビジネスの成否を左右するし、面白みがあるともいえるのです。
データに表れない異変どう危機感を共有するか
当然のことですが、たとえば「売上が昨年より5%下がっている」「シェアが30%から26%に低下した」という事実は簡単に異変を共有できます。さらに、「この要因の一つとして、配荷店舗数が10%、100店舗減少した」ことを伝えられれば、課題領域も即座に伝えられます。
ところが、これらの数字がほとんど下がっていないか、もしくは少し上昇していた場合だと、危機感や課題感の共有は難しくなります。
先日、ある企業の売場を見た際、かつて感じていた「勢い」がなくなっていたことに気づきました。後日、その企業の幹部社員と会ったときにそのことを伝えたところ、その人は同意しつつも、どうしたらいいかわからないようでした。
というのも、店舗改装も棚替えも粛々と定期的に行っていて、売上・利益の水準も以前と変わっていないからです。でも、確実に「勢い」がなくなっていたわけです。
その幹部は強い危機感を持ち、「この状態が続くと早晩、売上高の減少がはじまるのではないか」と恐れていました。そのことをいくら上司や同僚に話しても、データ上では異変が見えないため、まったく「響いていない」から困っている、というわけです。
お互いの「感覚」を共有できたわれわれの会話は盛り上がり、ついにはデータには表れない「勢い」に話が及びました。そもそも「勢い」があるかないかは、何をもって「勢い」ととらえるかに左右され、それをどう感じるかは「センス」次第で、個人差があります。だから感覚の異なる人と「勢い」を共有することは、明確に示せる根拠がないだけに、難しいです。
業績に響く前に課題を早期発見する!
おそらく、「現場の感覚が大切」と言う経営者は、この「空気」のようなものを察知してトップダウンで危機感を伝えて組織を動かしてきたのでしょう。だから問題が表面化する前に、対応できているわけです。
一方で、トップダウンではなく、ボトムアップだとこれは難しい。現場の社員がいくら異変を語っても、「データ」がない以上、組織は動かないからです。それどころか、