コンビニ「再」成長へ本腰、重い期待背負う新規事業の行方は?

大宮 弓絵 (ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長)
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SIPストアや生鮮強化店… 次世代CVS開発にも着手

 中長期で顧客に必要とされる存在になるための検証・実験にも動きだしている。

 セブン-イレブン・ジャパン(東京都/永松文彦社長:以下、セブン-イレブン)は、いまだ取り込めていない潜在ニーズの開拓と、次世代のCVSの在り方を模索するための新コンセプト店舗「SIPストア」の開発を構想。24年2月にはその1号店として「セブン-イレブン松戸常盤平駅前店」(千葉県松戸市)をリニューアルオープンした。

 売場面積は通常店の約1.8倍の約88坪、アイテム数は約1.7倍の約5300SKUと大型の店舗で、イトーヨーカ堂(東京都/山本哲也社長)をはじめ、セブン&アイグループのシナジーを発揮することで、生鮮や日配、ベビー用品、バラエティ雑貨など幅広い品揃えを実現した。開業からひと月の業績はオープンセール期間を除いても売上が対前年同期比で46%増と大きく伸長し、なかでも高齢者や子育て世代の来店が増える効果がでている。

 セブン-イレブンは現時点ではSIPストアを多店化する方針はないという。まずは検証により全店に適用できる事例を見出してスピーディに水平展開し、既存店の底上げにつなげていく。しかし同時に、SIPストアを通じて、2030年頃を見据えた「あるべきフォーマット」の研究開発を進めていく考えだ。

 国内でもとくに人口減や高齢化が早期に進む北海道を中心に店舗展開する中堅CVSのセコマ(赤尾洋昭社長)も、生鮮強化タイプの店舗開発に実験的に着手している。道内の過疎地ではSMが減少しつつあり、遠出をせずに身近な場所で買物を済ませたい人が増えていることから需要を見込んでいるという。

 今後、人口減や高齢化などがいっそう進めば、SMでは採算が合わない地域が増えるほか、高齢者が最寄りの店で買物を済ませたいニーズもいっそう高まってくる。そうしたなか、全国に物流網を持ち、他業態よりもローコストで運営可能なCVSが、ワンストップで日常に必要な買物を済ませられる業態となれば、大きな存在感を発揮していきそうだ。

 このようにCVSは、近年温めてきた次の成長施策を本格展開させる土台を整え、いよいよ新たな売上獲得に向けてアクセルを踏むステージに突入している。また、中長的を見据えて、出店競争でこれまで以上に狭くなる商圏内や、過疎地でも勝てる存在になるための実験や検証も、水面下で確実に推し進めている。

 コロナ禍が収束した今、CVSが“飽和論”を打破するような革新を生みだす、新たな転換期となりうるかもしれない。

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記事執筆者

大宮 弓絵 / ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長

1986年生まれ。福井県芦原温泉出身。同志社女子大学卒業後、東海地方のケーブルテレビ局でキャスターとして勤務。その後、『ダイヤモンド・チェーンストア』の編集記者に転身。

最近の担当特集は、コンビニ、生協・食品EC、物流など。ウェビナーや業界イベントの司会、コーディネーターも務める。2022年より食品小売業界の優れたサステナビリティ施策を表彰する「サステナブル・リテイリング表彰」を立ち上げるなど、情報を通じて業界の活性化に貢献することをめざす。グロービス経営大学院 経営学修士

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