負債巧者が勝ち筋に?アフターコロナ禍で脚光を浴びるゼンショー株から学ぶべき点とは

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22年度決算発表にみる
注目すべき3つのポイント

 このように通期決算は申し分のない内容でした。そこで、次に筆者が特に注目した点、考えさせられた点をお話します。

  第一は、営業利益率の改善を伴う増収基調にあること。売上高営業利益率の推移は、2022年3月期1.4%、2023年3月期2.8%、そして2024年3月期会社予想が4.4%となります。この4.4%という水準は日本の飲食業の中では及第点以上と言えると思います。このようなしっかりした数値を見せられると、業態の分散も含めた規模拡大が収益性と両立する好循環に入ったのではないか、とつい考えてみたくなります。

  第二は、増収増益基調と利益率の改善の結果、有利子負債の負担度が軽減したことです。これが株価の押し上げに相当効いたと考えます。

 この結果、第三に、良質のM&A案件があれば負債を活用して獲得できる下地が整ったことです。

負債巧者が勝ち筋に

  脱デフレは売価アップにつながる反面、経費増、あるいは金利負担増や資本コスト算出上の負債コストの上昇も招くため、株価上昇に結びつくと単純にはいえません。

 しかし脱デフレのマイナス面を規模追求でカバーする戦略に一理ある、というのが昨今のゼンショーの決算と株価の好反応が示唆するところではないでしょうか。

 インフレ期を迎えるにあたり、負債調達余力とその活用の巧拙がますます問われる気がしてなりません。収益性が高く、財務的には保守的で負債調達に余力のある企業が日本の小売業にはまだまだ散見されます。彼らが今後より規模拡大を競うようになるかもしれません。

 

プロフィール

椎名則夫(しいな・のりお)
都市銀行で証券運用・融資に従事したのち、米系資産運用会社の調査部で日本企業の投資調査を行う(担当業界は中小型株全般、ヘルスケア、保険、通信、インターネットなど)。
米系証券会社のリスク管理部門(株式・クレジット等)を経て、独立系投資調査会社に所属し小売セクターを中心にアナリスト業務に携わっていた。シカゴ大学MBA、CFA日本証券アナリスト協会検定会員。マサチューセッツ州立大学MBA講師

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記事執筆者

都市銀行で証券運用・融資に従事したのち、米系資産運用会社の調査部で日本企業の投資調査を行う(担当業界は中小型株全般、ヘルスケア、保険、通信、インターネットなど)。

米系証券会社のリスク管理部門(株式・クレジット等)を経て、独立系投資調査会社に所属し小売セクターを中心にアナリスト業務に携わっていた。シカゴ大学MBA、CFA日本証券アナリスト協会検定会員。マサチューセッツ州立大学MBA講師

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