株主対立のセブン&アイ、再編加速のイオン…トップアナリストが見通す業界の行方
再編絡みのニュースが業界を賑わせている。セブン&アイ・ホールディングス(東京都/井阪隆一社長:以下、セブン&アイ)はコンビニエンスストア(CVS)事業のスピンアウト(分離・独立)などを巡り、株主と激しく対立。2022年2月に決定したはずのそごう・西武(東京都/林拓二社長)の売却も無期限延期となるなど不透明な状況が続いている。他方、イオン(千葉県/吉田昭夫社長)は23年5月、出資するいなげや(東京都/本杉吉員社長)を子会社することを発表。業界中の注目を集めた。にわかに過熱する流通再編の行方について、小売業界のトップアナリスト、クレディ・スイス証券の風早隆弘氏が解説する。
株主提案は妥協点見つからず
セブン&アイは、アクティビスト(もの言う株主)のバリューアクト・キャピタル・マスター・ファンド・エルピー( Value Act Capital Master, Fund L.P.、本拠地米国:以下、バリューアクト)からの株主提案に対し、事実上「すべて受け入れられない」と拒否した。
バリューアクトの一連の株主提案は、セブン&アイに対する期待の大きさの裏返しともいえる。セブン&アイをよりよくするためにさまざまな提案を行い、経営陣とも議論を重ねてきたにもかかわらず、結局、バリューアクトが考えるリーズナブルな妥協点とセブン&アイにとっての妥協点との溝は埋まらなかった。
セブン&アイは、「『食』を中心とした世界トップクラスのグローバルリテールグループ」をめざす成長戦略において、「競争力の源泉となる食の強みを支えているのはイトーヨーカ堂を中心とするスーパーストア事業であり、食の領域での強みをグループで結集することこそ、国内外コンビニエンスストア(CVS)事業の成長に不可欠」と明言している。これを前提とするならば、バリューアクトが提案するイトーヨーカ堂(東京都/山本哲也社長)の売却やCVS事業のスピンオフは理論上ありえない。
一方、バリューアクトは、自分たちの株主提案が実行されない限り、投資先の株価は上がらないと信じている。つまり、セブン&アイの経営陣がバリューアクトの株主提案を実行しないと正式に意思決定した以上、セブン&アイの株式を保有し続けてもリターンは見込めないことになる。
結果的に両者にとって一定の学びはあったものの、これ以上は何も起こらないと考えられる。23年5月25日の株主総会ではセブン&アイが推挙する取締役候補が選任されるのがベースシナリオであろう。日本では、アクティビストのような「外圧」をうまく使って組織の変革につなげようと考える企業も少なくない。バリューアクトのアプローチがより生きる投資先はほかにあるはずだ。
そごう・西武売却のカギを握るのは……
セブン&アイは、
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