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阪急オアシス、イズミヤを吸収合併へ! H2Oが描くスーパーマーケット戦略とは

2022年11月1日、百貨店を主軸とする流通大手のエイチ・ツー・オー リテイリング(大阪府:以下、H2O)は、連結子会社・関西フードマーケット(兵庫県)傘下の阪急オアシス(大阪府)とイズミヤ(大阪府)を23年4月1日付で経営統合すると発表した。統合により、関西フードマーケットの主なSM事業子会社(H2Oの孫会社)は、関西スーパーマーケットと新会社「イズミヤ・阪急オアシス」の2社となる。本稿は、H2Oグループが描くスーパーマーケット戦略とイズミヤ・阪急オアシス統合の意味について考えてみたい。

関西スーパーマーケットは、阪急オアシス、イズミヤを傘下に持つエイチ・ツー・オー リテイリングと経営統合した

H2Oグループが描く長期ビジョン

 2021年8月、エイチ・ツー・オー リテイリング(大阪府:以下、H2O)は、近畿エリアを地盤とする関西スーパーマーケット(現・関西フードマーケット)との経営統合を発表し、両社は同日付で契約を締結。同時に、H2Oの子会社だったイズミヤと阪急オアシスを、関西スーパーマーケットと経営統合することも明らかにした。

 2021年10月末には、関西スーパーマーケットが臨時株主総会で統合案を承認。2022年2月には、買収した関西スーパーマーケットを「関西フードマーケット」に商号変更のうえ、食品スーパーカンパニー事業をKS分割準備株式会社に吸収分割した後、同社を「関西スーパーマーケット」(新・関西スーパーマーケット)に商号変更。同社とイズミヤ・阪急オアシスを傘下に擁する中間持株会社の関西フードマーケットが誕生した。これにより、店舗数240以上を誇る関西最大のスーパーマーケット連合が誕生した。

 ただし、H2Oにとって、関西フードマーケットの設立は2030年に向けたスタートにすぎない。

 H2Oは2021年に、将来ビジョンとして「2030長期事業構想」を公表した。この構想では、百貨店に依存していた収益構造を見直すとしており、食品事業を第2の収益の柱と位置づけている。

そうした状況下、関西フードマーケットに求められるのは、売上規模や成長性というよりも、収益性だ。なぜならば、収益源の多様化が実現しない限り、H2Oの収益性向上はなしえないからだ。

スーパー3社の収益性改善が急務!

 現状はどうか。新関西スーパー、イズミヤ、阪急オアシスの3社を合算した売上高は約4000億円と関西最大規模になる見通しだが、収益性は決して高くない。関西フードマーケットの2022年3月期の営業利益は58億円、売上高営業利益率は2.0%と物足りない。

 その最大の理由は、「3社バラバラ」である点に尽きる。関西フードマーケットは、事業会社のイズミヤ、阪急オアシス、新・関西スーパーマーケットと、ターゲットも品揃えも似通っている3つの子会社をかかえている。これらの3社は、仕入・オペレーション・本部組織(経営企画・業務管理・店舗開発・IT運営・サプライチェーンマネジメント・ガバナンスなど)も個別に持っており、業務プロセスも統一されていない。各社の個別最適を全体最適にしてこそ収益性は向上する一方で、食品スーパーの魅力や集客力という点でみると、全体最適に舵を切ることで、一時的に弱まるリスクも抱える。

 IT化も喫緊の課題だ。セルフレジやAIカートによる店舗オペレーションの省人化のほか、ITを活用した顧客とのコミュニティ形成も必要になってくる。

 H2Oは2030年度のグループ長期ビジョンとして営業利益300~500憶円、ROE6~7%を目標に掲げている。関西フードマーケットが収益改善を達成しなければ、グループ目標も達成できない。

 気になるのはスピード感だ。聞こえてくるのは、「ゴール設定が2030年というのは悠長すぎないか」という声だ。2030年では今の経営陣もみな退陣している可能性が高く、誰も結果に責任を持てない。「ビジョン2025」ぐらいが望ましいところだろう。

今回の統合は完全融合にむけた第一歩?

 2022年5月に公表された、関西フードマーケット初となる中期経営計画では、“完全融合”に向けたロードマップが示された。

 まずは3社を1つの会社とみなし、反発の少ないところから一元化を図る。具体的には、運営管理(予算統制や出店・退店・改装計画)、総務業務(店舗備品・消耗品購入、店舗内警備・清掃・メンテ)、マーケティング(留め型の商品開発・共同販促)などだ。

 同時に阪急オアシスとイズミヤの本格融合を進める。冒頭に述べたとおり、2023年4月より、阪急オアシスを存続会社とし、イズミヤを吸収合併するかたちで新会社イズミヤ・阪急オアシスが発足する。

 経営統合に踏み切ったうえで、営業およびマーケティング機能の組織統合、商流・営業政策・販売計画の一元化を進める。「イズミヤ」「阪急オアシス」の屋号は残すものの、店舗フォーマットは共通化し、商品政策も統一する。

 では「新・関西スーパーマーケット」はどうなるのか。旧関西スーパーをルーツとする関西フードマーケットはH2Oグループの上場連結子会社という位置づけであり、外部株主もおり独立性も高い。H2Oの子会社だったイズミヤと阪急オアシスのように、いきなり経営統合に踏み切るのは無理があるのかもしれない。

 客観的に見れば、新・関西スーパーマーケットも統合して、はじめて“融合”は完成する。今後は商流の一元化、店舗オペレーションの共有などを通じ徐々に外堀を固めていくのだろう。新体制によりどれだけ収益性が改善するのかに注目だ。