阪急オアシス、イズミヤを吸収合併へ! H2Oが描くスーパーマーケット戦略とは
スーパー3社の収益性改善が急務!
現状はどうか。新関西スーパー、イズミヤ、阪急オアシスの3社を合算した売上高は約4000億円と関西最大規模になる見通しだが、収益性は決して高くない。関西フードマーケットの2022年3月期の営業利益は58億円、売上高営業利益率は2.0%と物足りない。
その最大の理由は、「3社バラバラ」である点に尽きる。関西フードマーケットは、事業会社のイズミヤ、阪急オアシス、新・関西スーパーマーケットと、ターゲットも品揃えも似通っている3つの子会社をかかえている。これらの3社は、仕入・オペレーション・本部組織(経営企画・業務管理・店舗開発・IT運営・サプライチェーンマネジメント・ガバナンスなど)も個別に持っており、業務プロセスも統一されていない。各社の個別最適を全体最適にしてこそ収益性は向上する一方で、食品スーパーの魅力や集客力という点でみると、全体最適に舵を切ることで、一時的に弱まるリスクも抱える。
IT化も喫緊の課題だ。セルフレジやAIカートによる店舗オペレーションの省人化のほか、ITを活用した顧客とのコミュニティ形成も必要になってくる。
H2Oは2030年度のグループ長期ビジョンとして営業利益300~500憶円、ROE6~7%を目標に掲げている。関西フードマーケットが収益改善を達成しなければ、グループ目標も達成できない。
気になるのはスピード感だ。聞こえてくるのは、「ゴール設定が2030年というのは悠長すぎないか」という声だ。2030年では今の経営陣もみな退陣している可能性が高く、誰も結果に責任を持てない。「ビジョン2025」ぐらいが望ましいところだろう。
今回の統合は完全融合にむけた第一歩?
2022年5月に公表された、関西フードマーケット初となる中期経営計画では、“完全融合”に向けたロードマップが示された。
まずは3社を1つの会社とみなし、反発の少ないところから一元化を図る。具体的には、運営管理(予算統制や出店・退店・改装計画)、総務業務(店舗備品・消耗品購入、店舗内警備・清掃・メンテ)、マーケティング(留め型の商品開発・共同販促)などだ。
同時に阪急オアシスとイズミヤの本格融合を進める。冒頭に述べたとおり、2023年4月より、阪急オアシスを存続会社とし、イズミヤを吸収合併するかたちで新会社イズミヤ・阪急オアシスが発足する。
経営統合に踏み切ったうえで、営業およびマーケティング機能の組織統合、商流・営業政策・販売計画の一元化を進める。「イズミヤ」「阪急オアシス」の屋号は残すものの、店舗フォーマットは共通化し、商品政策も統一する。
では「新・関西スーパーマーケット」はどうなるのか。旧関西スーパーをルーツとする関西フードマーケットはH2Oグループの上場連結子会社という位置づけであり、外部株主もおり独立性も高い。H2Oの子会社だったイズミヤと阪急オアシスのように、いきなり経営統合に踏み切るのは無理があるのかもしれない。
客観的に見れば、新・関西スーパーマーケットも統合して、はじめて“融合”は完成する。今後は商流の一元化、店舗オペレーションの共有などを通じ徐々に外堀を固めていくのだろう。新体制によりどれだけ収益性が改善するのかに注目だ。