フジとマックスバリュ西日本が経営統合へ イオン岡田会長「さらなる寡占化が…」
売上規模は8700億円超
フジ(愛媛県)、マックスバリュ西日本(広島県)、イオン(千葉県)の3社は9月1日、2024年3月をめどにフジとマックスバリュ西日本を合併し、統合新会社を設立することで基本合意したと発表した。かねて業種業態を超えたボーダレスな競争が熾烈化していた中四国エリアにおいて、売上高8000億円クラスの大企業体が誕生し、地域の勢力図が大きく変わることになる。
新会社設立に先立ち来年3月に経営統合を予定
フジ、マックスバリュ西日本、イオンの3社は9月1日、愛媛県内と東京都内の2カ所で記者会見を開き、フジとマックスバリュ西日本の経営統合に関する基本合意書締結を発表した。
まず22年3月1日に、フジを分割会社として、イオンの連結子会社となる共同持株会社としてのフジを設立、同社の下に事業会社としてのフジとマックスバリュ西日本が連なる。持株会社のフジは上場を維持する。その後24年3月をめどにフジとマックスバリュ西日本が合併し、統合新会社を設立する予定だ。
フジとマックスバリュ西日本の売上高を合算すると約8700億円。店舗数は510店舗、従業員数は約3万2000人に及ぶ、中四国を代表する大企業体が誕生することになる(数値はいずれも21年2月期の決算数値ベース)。経営統合によって、商品、物流、デジタル改革などへの取り組みにイオンの知見も生かしながら注力し、「中国・四国No.1 のスーパーリージョナルリテイラー」をめざす考えだ。
フジは18年10月にイオンと資本業務提携を締結しており、イオンはフジの株式15%所有する筆頭株主となっている。また、同時期にフジはマックスバリュ西日本の発行済み株式7%超を取得しており、同じ中四国を地盤とする2社が資本関係を結んだことで、その後の関係性に注目が集まっていた。発表資料上では「中国・四国地方の産業、社会、文化、雇用などの問題解決についてスピードを上げて取り組むためには、各社の関係をより一層深化させることが必要であるとの考えに3社で至った」ことが経営統合合意の背景にあると説明されている。
フジはイオンとの資本業務提携以降、イオンの電子マネー「WAON」の導入、イオンの調達ルートを活用した備品・消耗品、商品の仕入れなどを実施。さらに今秋建て替えオープン予定の「イオンタウン川之江」(愛媛県四国中央市)へのフジのSM出店など、出店面でも支援を得てきた。フジの尾崎英雄会長は「イオン各社と連携し、緩やかながらも私どもとして一定の成果を出すことができた」と振り返る。
その一方で、「われわれの事業エリア(中四国)の中で進みつつある高齢化や人口減少などの動きは、地域社会の活力維持、地域経済全般にとって大きな課題となっている」(尾崎会長)と指摘。地盤を同じくするマックスバリュ西日本との合併・新会社設立によって、イオンの知見もフルに活用しながら、顧客満足・企業価値の向上、働き甲斐の創出などをめざしていきたいとした。そのうえで、「(統合の)目標は規模とネットワーク(の拡大)に加え人的資源基盤、知見・ノウハウ等のシナジーを通じて地域の暮らしと従業員の圧倒的な安心とワクワクを実現することだ」と意気込みを語った。
イオン岡田会長「地方の企業こそ真っ先に変わるべき」
一方、イオンの岡田元也会長は今回の経営統合に関し、「今回のコロナ禍で確認できたのは、企業の革新性の重要性と、”地方の力”の重要性だ」と持論を展開。
「コロナ禍で力不足を露呈したのは中央政治、官僚、東京をはじめとする大都会だ。したがって今後カギになるのは、(民間)企業と地方、そしてその双方の持つ変革力。そして地方の変革と発展のためにはその地方にすでに存在する、あるいはこれから生まれてくる企業の変革と発展によるところが大きい。企業が変われば地方は変わる、地方が変われば日本全体が変わる。地方の企業こそ真っ先に変わるべきだ」と力を込めた。
そのうえでフジとマックスバリュ西日本の統合について、「中四国9県はおよそ1100万人の人口を有し、これは十二分に大きな市場。イオンは一部の県を除いて、いまだにシェアと言えるほどの(存在感は)有していない。何よりもお客さまに接近して、一人ひとりのウォレットシェアを向上させる「エコシステム」構築のための変革が必要。(新会社を)革新に革新を重ねて、中四国の発展に最も寄与するイノベーティブな企業にしていきたい」とした。
アフターコロナの世界を見据えた合従連衡の動き活発化か
奇しくも、昨日(8月31日)にはエイチ・ツー・オーリテイリング(大阪府)による関西スーパーマーケット(兵庫県)買収のニュースが市場を駆け巡ったばかり。2日連続で食品小売企業による”合従連衡”の動きが報じられることになったわけだが、イオンの岡田会長は食品スーパー市場のさらなる上位寡占化を予測する。「ほかの業種業態に比べ、食品スーパー市場はそれほど寡占化は進行していない。しかし、巨大化した他業態の企業が食品を扱うようになっていて、食品スーパーの競合相手が非常に大型化しており、そこにアマゾンや楽天(などのEC企業)が加わる。現在は売上高5000億円を超えるスーパーは少ないが、昨日のエイチ・ツー・オーさんの話も含め、”コロナ後の対応”と軌を一にして状況は急速に変わっていくだろう」と分析した。
コロナ禍の収束見通しは依然として立たない状況ではあるものの、食品小売市場において、アフターコロナの世界を見据えた戦略的な提携、あるいはM&A(合併・買収)は今後も続いていく可能性が高そうだ。