アングル:出店攻勢のノジマが進出、「池袋家電戦争」に新局面
[東京 30日 ロイター] – 神奈川県を地盤とする家電量販店のノジマが東京23区内への出店攻勢を続けている。コロナ後も見据え今年に入って世田谷区、目黒区、大田区に出店し、26日には豊島区池袋の東武百貨店内に店舗をオープンした。ビックカメラが本店ほか多店舗を展開し、近接してヤマダデンキが「日本総本店」を構える激戦地で存在感を示せるのか。かつて「池袋家電戦争」とも呼ばれた攻防は新たな局面を迎えた。
メーカー販売員不在を強調、価格面も「全力で戦う」
池袋駅西口にある東武百貨店は、都内の百貨店では最大級の売り場面積を誇る。ターミナル駅直結の百貨店周辺では、エリア初進出となるノジマの開店が大々的に告知されている。郊外型店舗が比較的多く、最近ではテナント出店を加速するノジマでも百貨店内の店舗は池袋店で3カ所目と数少ない。しかし、メーカー販売員を置かず自社スタッフのみで接客するというノジマのスタイルは「客層にマッチする」(鈴木靖哲店長)とみて、広告でも差別化策として強調している。
大型店舗を構えるビック、ヤマダとの競合についても、鈴木店長は「価格面でも全力で戦う」と意気軒高だ。会員向けのポイント還元では、ノジマは商品の販売時のほか、来店のみでも付与することを「売り」としてきた。一定の制限付きながら、商品の検討段階や買い物ついでの来店でも積み増すことが可能で、顧客の囲い込みに活用する。
ノジマ池袋店は約2000平方メートルの規模で、婦人服売り場が中心の4階に陣を構えた。大通りに面した大型店舗とは立地条件が異なり、家電量販店の従来の常識では必ずしも有利とはいえないとされる。家電業界に詳しい細田立圭志BCN+R編集長は「ノジマはノウハウを持っているのかもしれない。成功するかどうか見ものだ」と話す。
攻防の激化、迎え撃つ側も集客効果に期待
池袋地区には、グループ企業のソフマップを含めビックが6店舗、ヤマダが2店舗を展開している。ビックの池袋西口店を除きいずれも東口の一帯に集中しており、ビック池袋本店とヤマダ日本総本店は通りを挟んではす向かいで対峙する。群馬県に本社を置くヤマダが日本総本店と名付けるほど力を込めた2009年10月末の出店時には、各媒体で「家電戦争」の見出しが躍った。
2010年代前半にはラオックスが東武百貨店に店舗を出していたが、大勢としてはビック・ヤマダ対決の構図が続いてきた。ノジマ出店に「特段コメントすることはない」(広報担当)というビックも、今年1月に東口カメラ館を閉店する一方、7月末にはヤマダ総本店の真横にアップル製品にフォーカスした店舗を開くなど変遷が激しい。
今回のノジマ進出は出店形態のほか、場所も駅の西口に近く、ビック・ヤマダの東口の店舗群から徒歩で8分ほどの距離があるため、ヤマダの出店時とは様相が異なる。業界を巡る環境も、定額給付金の支給やテレワーク需要でパソコン販売が活気づくなど「生活様式が一変する中で良すぎた面がある」(細田BCN+R編集長)昨年とは違って、緊急事態宣言が長引く現状ではインバウンド需要の回復も見込めず、決して良い環境ではない。
それでもノジマの出店は「地域の集客力が高まるのでプラスになる」(ヤマダホールディングスの広報担当)側面もあるという。家電量販店の攻防は利用者だけでなく、店側にもプラス効果が見込めるというわけだ。
ビックのPRソングで池袋は「東が西武で西東武(にしとうぶ)。高くそびえるサンシャイン」と百貨店の位置と高層ビルが象徴として歌われる。ネット・テレビ通販の浸透、家電以外の品ぞろえなど競合関係が複雑化する中で、あらためて家電激戦地としての認知度を高められるかどうかは、ノジマだけでなく、迎え撃つ側の動きにもかかっている。