ローソンストア100が脱100円均一、ミニスーパー化する深慮遠謀
献立作りをサポート「献立応援コンビニ」へ
「献立応援コンビニ」とは何か、吉田氏に聞いた。「コロナ禍で内食需要が高まった一方で、調理疲れや毎日の献立への悩みを抱えているお客さまも多い。ローソンストア100に来れば、今夜の献立が決まって必要な買物も完了する。そういう店をめざす」。具体的には、プライスカードやポップ、店内放送などを活用し「この食材をどう使えば手軽に一品が完成するか?」などのヒントを発信。さらにこれら単品の活用アイデアに加え、取り扱っている食材の組み合わせでつくることのできるレシピも提案する。これらのレシピやアイデアは本部からも提供するが、地域の特産品や味付け、調理方法を生かしたものを各店舗のスタッフが独自のPOPなどを作成し発信することもある。お客とのコミュニケーションのきっかけにもなり、発信を楽しんでいるスタッフも多いという。
ただし、この取り組みのために欠かせないのは生鮮食品を含む食品のラインアップの充実だ。ローソンストア100ではこれまでも週に2回、「新鮮青果市」を開催するなど青果の販売には注力してきた。しかしその結果、「麻婆茄子をつくりたいが、茄子は売っているのにひき肉がない」といった現象が起こることもあった。これまで精肉は売れ筋に絞って品揃えをしてきたが、「冷しゃぶ用」「トンカツ用」など夕食向きの素材にラインアップを変更。ほか、味付け肉や国産肉、ブランド豚なども品揃えした。
一方、ローソンストア100がこれまで取り扱ってこなかったのが鮮魚だ。これまでは一部の冷凍魚のみを販売していたが、今後はニーズを慎重に見極めたうえで品揃えの拡充を図る方針だ。「魚を求める人はつまり何を食べたいのか」を考え、調理前の鮮魚をそのまま販売するのではなく、マグロの刺身やタタキ、塩焼き、寿司など魚総菜中心の品揃えを検討している。
冷凍食品にも変化があった。もともと冷凍食品はローソンストア100の中でも人気が高く、すべての商品が100円、という売場だった。これまでは人気の理由は価格だとも考えていたが、19年以降からコロナ禍にかけての取り組みで、から揚げや餃子などNBの人気商品を販売したところ100円ではないにもかかわらず好調な売れ行きを記録。価格にこだわらず、ニーズの高い商品を充実させることの重要性を改めて感じたという。今後は、冷凍食品売場の面積をできるだけ広く確保し、よりニーズに応えたラインアップをめざす。
現在、100円以外の商品が多いカテゴリは生鮮食品だ。市場価格に応じて柔軟に価格を設定するためで、「シャインマスカット」など付加価値の高い商品も導入した。SMの特売品より安くはできないものの、卵6個1パック124円(税込)などCVSより安い価格設定をめざす。
とはいえ、均一価格という創業以来のスタンスを捨て去るわけではない。むしろ、「100円の商品をしっかり残すことが、大手SMとの差別化につながると考えている」(吉田氏)。21年7月現在、ローソンストア100の平均的な店舗では約6割が100円の商品だ。これまで100円にこだわった商品開発をしてきたからこそ、「100円おでん」や「100円おせち」などの人気商品が生まれた経緯もある。さらに、コロナ禍で伸びた主婦層だけでなく、シニア世代もローソンストア100の重要顧客層だ。シニア世代にとって、ローソンストア100は近くで、使い切りサイズを購入できる便利な店でもある。SMとしての品揃えの充実と、100円均一商品の充実の両立が、今後競合と戦っていくうえで重要な戦略になるとみていいだろう。今後は、まず人気の高いNBの導入でニーズを満たし、追って100円以外のPB開発も進めていく方針だ。
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