2度の危機を乗り越えた優良SMエコス 創業者・平富郎会長を支えた「3人の先生」
大きく影響を受けた「3人の先生」
以前のインタビューで平氏は、次のように語っていた。
「私に心の拠り所はありませんでした。自分にはなかったから、せめて若い仲間の拠り所になってあげようと考えています。人間というのは、強がっているようで結局は弱い生き物です。私も強くはありません。経営者というのは気が弱いものです。だから企業のナンバー2には、『イケイケドンドン』の気が強い人間が必要なのです。それを『大丈夫かな』と石橋を叩いて渡る。経営者の気が大きかったら、会社がいくらあってもみんな潰れてしまいます。とくに創業経営者は気が小さくて、ケチだからこそ会社を興せたし、維持もできているのです」。
そんな平氏には、恩師と呼べる先達がいる。自らの「モノの見方や考え方」を確立するにあたって大きく影響を受けたのは「3人の先生」だという。
1人目は、故伊東壮氏。国立山梨大学元学長、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)代表委員などを務めた人物だ。伊東氏からは、“寛容と忍耐”を学んだという。高校3年の担任だった伊東氏が通信簿に記した。そして、「君はよく働くのだから、さらに寛容と忍耐を身につけなさい。そうすれば成功する」と言ってくれた。「寛容とは許すこと。忍耐とは我慢すること――。この言葉が私の10代から今日に至るまでの『モノの見方や考え方』の中心になっている」(平氏)。
2人目は、故川崎進一氏。ジャスコの元監査役、東洋大学名誉教授や日本リテイリングセンター・マネジメント・コンサルタントなども務めた。20代の後半から30代に大きく影響を受け、“論理なき行動は暴走である”ことを教わった。「いくら働いても経験だけでは勝てない。だから、勉強をしなければいけない。しかし知識だけでも勝てない。“経験×知識”が知恵を生み出す。そして知恵こそが会社を成長させる、ということ学んだ。だから商売をしながら、がむしゃらに勉強した」(平氏)。
3人目は、故林信太郎氏。元通商産業省の官僚、ジャスコの元代表取締役副会長で“競争とは企業を磨く砥石である”ことを学んだ。「『小売業にとって競争は宿命だ。競争に積極的に参加しなければ成長しない。競争が厳しくなるとつい弱気の虫が出て逃げたくなるけれども、それはいけない』、と鼓舞激励された。セルコチェーン理事長を務めていた50代後半にとくに影響を受けた」(平氏)。
平氏が心がけているのは「経営はABC」ということだ。A「当たり前のことを」、B「馬鹿にしないで」、C「ちゃんとやること」という意味である。「創業経営者で成功した人には頭のいい人はそれほど多くはいません。当たり前のことを、地味な努力をコツコツと繰り返すタイプが成功していると思います。まずは当たり前のことを真面目にやることが大切です」(平氏)。
さて現在のエコスは、75店舗を展開するエコスのほか、たいらや(栃木県/平典子社長:26店舗)、マスダ(茨城県/千羽一郎社長:13店舗)、与野フードセンター(埼玉県/木村幸治社長:14店舗)の4つの企業で首都圏に合計128店舗を展開する。ここに物流センターの管理運営業務などを担うTSロジテック(東京都/瀧田勇介社長)を加えた5社でグループを形成している。
2021年2月期のエコスの業績(連結)は、営業収益1360億円(対前期比7.5%増)、営業利益57.4億円(同33.8%増)、経常利益58.7億円(同33.4%増)と好業績を保っている。
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