紀ノ國屋 代表取締役社長 堤口 貴子
駅構内・駅ビル内への出店を強化し、駅利用者に豊かな食生活を提案する

聞き手・構成:大宮 弓絵 (ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長)
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1910年に創業し、東京都内を中心に高質食品スーパー(SM)を展開する紀ノ國屋。2010年に東日本旅客鉄道(東京都/冨田哲郎社長:以下、JR東日本)の完全子会社となった同社は、17年度から駅構内や駅ビル内への出店を加速している。17年5月、新社長に就任したJR東日本出身の堤口貴子氏に、今後の成長戦略を聞いた。

3年で16店舗を出店へ、駅利用者の需要を取り込む

堤口 貴子
つつみぐち・たかこ●1969年生まれ。93年3月、早稲田大学第一文学部卒業。同年4月、東日本旅客鉄道入社。95年5月、ジェイアール東日本商事へ出向。2000年5月、東日本旅客鉄道 事業創造本部。07年4月、ジェイアール東日本物流出向。08年4月、東日本旅客鉄道 事業創造本部。16年6月、紀ノ國屋 取締役営業本部長。17年5月、現職。

──今年5月に社長に就任されました。

堤口 JR東日本では、おもに駅構内で展開する小売店や飲食店広告などの事業を開発・主管する仕事をしてきました。

 JR東日本は成長戦略の1つに「ステーションルネッサンス」を掲げています。一昔前は、駅構内といえば、立ち食いそばや「キオスク」などの売店くらいしかありませんでした。そこで、経営資源として「駅」の価値や役割を見直し、利用者が通過してしまうのではなく、集える場所になれるように再開発を進めているのです。近年では駅だけにとどまらず、駅が立地する街全体の活性化に取り組むことにより、地域とともに長期的な成長につなげようとしています。

 一方、紀ノ國屋は「食を豊かに、人生を豊かに」を経営理念としています。駅への店舗展開を通して、日常的に駅を利用されるお客さまに、食生活を軸とした新しいライフスタイルを提案していきます。その結果として、駅の魅力や価値を向上できると考えています。

──17年度に入ってから出店を加速しています。

堤口 JR東日本グループに入ってから約7年が経過し、経営状況が安定してきたこと、商品開発や売場づくりなどの環境が整ってきたことから出店強化に舵を切っています。16年度までは年間1店舗ほどの出店ペースでしたが、今後3年で16店舗を出店する計画です。1年目の17年度はその半数に当たる7~8店舗をオープンする予定で、1店舗1店舗を確実に軌道に乗せていくことを最優先で進めていきます。

──出店する場所についてはどのように考えていますか。

堤口 JR東日本グループ入りするまで紀ノ國屋はおもに路面店を展開してきましたが、今後はJR東日本の駅構内や駅ビル内をメーンに出店していきます。

 駅は幅広い方が利用する場所です。そのため、駅構内や駅ビル内に出店することでこれまで当社の店舗を利用していなかったお客さまを新たに獲得していきたいと考えています。

 駅構内や駅ビル内の店舗の場合、駅利用のついでに立ち寄るというお客さまがほとんどです。また、お客さまの買物にかける時間が限られています。こうした条件下でも需要を取り込んでいくためには、店舗の出入口の間口を広げたり、通路からでも目にとまりやすくわかりやすい売場づくりをしたりといった工夫が必要です。

 また、駅構内や駅ビル内以外にも、紀ノ國屋の客層と似ているという点から出店していきたいのが百貨店内です。これまでは東京都新宿区の「京王百貨店 新宿店」と「新宿タカシマヤ」の2店舗への出店のみでしたが、今年9月には「東武百貨店池袋店」にも出店しました。今後もさらに店舗数を増やしたいと考えています。

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聞き手・構成

大宮 弓絵 / ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長

1986年生まれ。福井県芦原温泉出身。同志社女子大学卒業後、東海地方のケーブルテレビ局でキャスターとして勤務。その後、『ダイヤモンド・チェーンストア』の編集記者に転身。

最近の担当特集は、コンビニ、生協・食品EC、物流など。ウェビナーや業界イベントの司会、コーディネーターも務める。2022年より食品小売業界の優れたサステナビリティ施策を表彰する「サステナブル・リテイリング表彰」を立ち上げるなど、情報を通じて業界の活性化に貢献することをめざす。グロービス経営大学院 経営学修士

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