ビール1本から1時間枠で無料配達 唯一無二のビジネスモデルを磨く!カクヤス佐藤 順一社長
1時間枠での配達を生かす、自社ECは都内に特化
──拡大するEC(ネット通販)にはどう対応しますか。
佐藤 EC側に支払う手数料コストがかかりますから、EC直販に対して不利になります。運賃も当社で負担していますが、改正酒税法を遵守していくと赤字販売になりかねません。
当社の物流網が出来上がっているエリアでは1時間枠で、運賃をかけずに商品を配達できます。しかし、当社の物流網のないエリアでは運賃がかかりますし、EC側に手数料を支払わなくてはなりません。ですから今後は、物流網を持つ都内に特化していく方向です。自社ECも1時間枠での配達を生かした戦略をとっていきます。改正酒税法は売り方にも大きな影響を与えているのです。
──流通業界では人手不足が深刻化しています。どのように対応していますか。
佐藤 店舗から商品を届ける宅配のアルバイトが採用しにくくなっています。業務用の物流要員はすべて正社員で、それは確保できています。しかし、店舗の配達要員はアルバイトが多く、時給1500円でも確保するのが難しい状況です。そこで今後はアルバイトを正社員化していこうと考えています。正社員化すれば戦力になります。
一方で、全国から高卒の正社員採用を増やしています。ただ実際のところ採用は苦戦しており、今年は目標の100人に対して80人ほどしか採用できないようです。ビールメーカーもそうですが、高卒の採用を増やしている上場企業が多く争奪戦になっているからです。そのため、採用面で非上場であることがデメリットになる可能性があります。そういう意味で当社は現在、株式上場をめざしているところです。
──年商1000億円規模に成長できた要因は何ですか。
佐藤 業務用と家庭用の両方を手がけたこと、人口の密集した東京都23区に限定したこと、それとライバルが出てこなかったことです。酒類に特化して配達を武器に自社物流で、EC、業務用、家庭用をぜんぶ取り込もうと戦略を描いた会社は出てきませんでした。「ビール1本から1時間枠で無料配達します」というフレーズはお客さまに響いたけれども、「うまくいくわけがない」と同業他社にも響いたと思います。だからどこも参入してこなかったということでしょう。
──中長期の成長戦略をどう考えていますか。
佐藤 価格訴求が“禁じ手”になってきていますから、M&A(合併・買収)が重要になってくるでしょう。対象企業は同業をはじめ酒類業界を考えています。
今は価格で戦えなくなったと言いながらも、同じ価格であれば勝ち目はあります。配送の時間指定ができますし、営業マンの質も高いからです。われわれは単に届けているのではなく、販売をしているという面があります。玄関先を売場と考えれば、接客が必要になります。これは宅配会社の配送員ではできないことでしょう。業務用と家庭用の両方を持つのも強みです。今後これをどう連動させていくかもテーマになってきます。
売上高でめざすのは3000億円です。酒類だけでは難しいため、それ以外の食品などを取り込んでいくことになるでしょう。