売らずにコト消費の場づくりへシフトするマルイの戦略とは フィンテックが収益の柱へ
5年計画で独自のビジネスモデルをさらに追求
もっとも、そのルーツを辿れば、家具の割賦販売に行く着く同社。その遺伝子には貸付けから利益を得る才覚が植えこまれており、そもそも百貨店と同列で語ること自体ナンセンスといっていいのかもしれない。
それでも2021年3月期は営業利益が12期ぶりに減益。小売事業は2期連続、フィンテック事業についても9期ぶりの減益となった。
決算発表の場で公開された中期経営計画(中計)では、変化に強い独自のビジネスモデルをさらに追求。独自の進化を遂げた“百貨店”からの完全変態を遂げ、5年後の26年3月期にエポスカードの取扱高5.3兆円、フィンテック事業での営業利益530億円を見据えることなどが明かされた(21年3月期の取扱高2.6兆円、フィンテック事業営業利益203億円)。
同社社長の青井浩氏が2022年3月期~2026年3月期の5ヵ年計画として掲げた新中計では、「店舗とフィンテックを通じてオンラインとオフラインを融合するプラットフォーマーを目指す」「将来世代との共創を通じて、社会課題の解決と収益を両立」「新規事業、共創投資への無形投資を進めることで、知識創造型の企業に進化」といった言葉が述べられた。
マルイ流のオンーオフラインの融合の狙い
「オンラインとオフラインを融合するプラットフォーマーをめざす」。これは、単にオンラインの店舗をオフラインに進出させるという意味でなく、「プラットフォーマーをめざす」ということが肝となる。
それはつまり、ECを展開する企業に対し、よりサービスを知ってもらうことを主軸にした体験を軸としたリアル空間を提供し、互いの企業価値を高めていくということだ。
実際、オンラインで多くの利用者を持つメルカリやSparty、FABRIC TOKYOらとタッグを組み、リアルの場でそのブランド理解を深めるなど、さらなる成長への顧客との接点づくりに貢献。マルイ各店舗の立地の良さと相まって、まさに「共創」の言葉通り、互いのメリットを活かしながら、成果を生み出している。
さらにオンラインとオフラインをイベントでつなぐことにも力を入れ、アニメ事業や新規事業のイベントを積極開催。「売らない百貨店」でありながら、「人が来る百貨店」として、さまざまなイベントを仕掛け、その存在感を増している。