元ウーバー社員が、北欧発の新興フードデリバリー「ウォルト」の成長性に賭けた理由
破格の配送料と、”投資領域”に位置付けるカスタマーサポート
――2つ目の配送料の安さも大きな特徴ですが、それを実現できる効率的なシステムをどのように開発しているのですか。
安井 詳しくお話しすることはできませんが、ウォルトがフィンランド発祥であるという点は大きいでしょう。人口密度も飲食店の密度も低く、一方で人件費が非常に高いフィンランドでは、「安い労働力で賄う」ことが不可能であり、それを解決するためのイノベーションを起こす必要があったわけです。決して肥沃とは言えないマーケットでビジネスを成立させるためには、とにかく配送効率を追求する必要があります。
そこでウォルトは独自のアルゴリズムを介した配送システムを開発し、人口数万人程度の中小都市でもサービスを展開することができるようになったのです。日本でも広島や仙台などの県庁所在地だけでなく、呉や旭川といった地方都市で競合に先駆けてサービスをローンチしていますが、それもウォルトだからこそできたことなのです。
――3つ目のカスタマーサポートの領域については、具体的にどういった取り組みを行っていますか。
安井 フードデリバリーはオンデマンドサービスですので、“ボタンの掛け違い”から生まれるミスやトラブルも少なくありません。もともとのサービスの特性として、品質の維持・管理は非常に難しい業種なのです。
そこで重要になるのが、とにかく「すぐに対応する」ということです。起きた問題に対して素早く対応し、解決策を提示し、同時にその後の予防策まで考えを巡らす。これはオンデマンドサービスにおける顧客体験を向上させるために欠かせないプロセスです。
ウォルトでは、カスタマーサポートを投資領域と考えて、スキルの高い社員を登用するという戦略をとっています。コストセンターととらえ、少ない人員でできるだけ多くの問い合わせを“捌く”ことを重視する企業もある一方、ウォルトはサポート領域に一定額を投じ、“ファン”をうみだしていくことに力を入れています。短期的に見れば効率は悪いかもしれませんが、中長期で考えたときに、ファンの存在というのは大きな意味を持ちます。