顧客に寄り添う「共創経営」で未来志向のジネスモデルを創造する=丸井グループ 青井 浩 社長
「共創」から「共創経営」へ
──「共創」の考え方は、商品開発や施設づくりだけでなく、取引先や株主、投資家との関係にも広がってきています。
青井 「共創」の取り組みを進めるなかで、当社の企業価値について、お客さま、従業員だけでなく、お取引先さま、株主・投資家さまなどすべてのステークホルダーを含めた、以前よりも広い範囲で考えるようになりました。
それぞれのステークホルダーが求める価値は、異なるように思えてじつは相互に結びついています。たとえば、お客さまの満足度が向上すれば当社の利益は伸長し、株主・投資家さまからの評価が高まります。株主・投資家さまからの投資が増えれば、より多くのお客さまの満足度につながるサービスを提供できます。
つまり、すべてのステークホルダーが求める価値が成立する状態となることが大切なのです。そのような状態を当社では「調和」と呼んでいます。「調和」こそが最大の企業価値を生み出します。
「調和」をめざすために必要なのは、お客さまや従業員だけでなく、株主・投資家さま、お取引先さまとも対話の場をつくり「共創」していくことです。そこで会社全体のテーマに「共創経営」を掲げるようになりました。
──「共創経営」を進めるうえで課題はありますか。
青井 「共創経営」により、中長期的に価値を生み出すことができると確信しているのですが、その効果を証明する実績が現時点では少ないことです。
「ラクチンきれいシューズ」シリーズのヒットや、博多マルイの開店初年度の入店客数が歴代最高を記録したなど、いくつか実績は出てきてはいるものの、限られています。今後は「共創経営」の効果を財務面から明確に説明できるような努力が必要だと考えています。
──最近新たに推し進めている「共創」の取り組みがあれば教えてください。
青井 ECにおいても「共創」の取り組みを生かしたいと考えています。
当社は小売業の中では比較的早くからECを手掛け、10年ほど前に売上高が200億円に達したのですが、その後は足踏み状態になっていました。
しかし近年、靴やバッグ、アパレルなどのPB開発を強化してきたところ、PB商品の購入をきっかけにEC利用者が増加し売上が伸長しています。
そこで、これまでの枠を超えた新たなECビジネスを17年度中にスタートする計画です。これまでECサービスを開始する場合、仮説を立ててWeb上のページを作成していましたが、サービス開始後に検証して修正するとなると、そこからさらに半年ほどかかってしまいます。
それよりも、サービスを組み立てる段階からお客さまに参加していただければ、開始時のサービスの精度を上げることができます。新しいビジネスモデルを構築するときこそ「共創」の取り組みが真価を発揮すると考えます。
──「共創経営」を始めて得られたものは何でしょうか。
青井 気づいたことは、お客さまから学ぶことがとても多いということです。共創のプロセスを通じて、われわれは日々未来に向けて成長しているということを実感しています。
また、商品を販売するという枠を超えてお客さまとお付き合いができることは、充実感や喜びにつながっています。これまで長きにわたって小売事業が低迷基調だったからこそ、お客さまやお取引先さま、株主・投資家さまとともに成長していけるというこの感覚はとても新鮮で嬉しいことです。
これから小売業界を活性化するには、一人ひとりが日々の仕事で気持ちを擦り減らすのではなく、少しずつ成長して未来を創造している実感を味わえるようになることが必要不可欠です。今後も短期的ではなく中長期的な価値創造に目を向けて「共創経営」を進めていきます。