売上高日本一のSMチェーン発足!統合シナジーを具現化=U.S.M.H上田 真 社長
関東圏で圧倒的なシェアをとれる商品が相当数ある
──事業会社の自主自律を前提にすると、出店政策や商品政策の面で、シナジーを得にくいのではないですか。
上田 われわれ3社は切磋琢磨する関係ですが、目的を共有しています。
ですから、出店調整は基本的にはしなくていいと思っています。
もちろん、ひとつの物件をお互いが取り合いをしたり、目玉商品の値下げ合戦をしたりするといった無意味な競い合いをするつもりはありません。
仮にマルエツとカスミが近場に出店するとします。それはU.S.M.Hにとり、トータルでマーケットを拡大することにつながります。
私の経験からいえば、同じ小型SM「マルエツ プチ」2店舗が至近距離に出店しているケースでは、売上は1.4倍に増えます。これが1.6倍になれば、2店舗が十分に成り立ちます。屋号が異なり売場も異なる2店であれば、売上が1.6倍以上になることは難しいことではないはずです。
一方、商品政策面ですが、可能なことから統合を進めていく考えです。ただ、帳合の統合や商品政策の変更ありきではなく、それはそのままにしておいてでも、共同商談、共同販促といったキャンペーンをやり続けていくことがシナジーにつながります。
今回経営統合した3社は、業態とエリアにおいて親和性があります。業態はSMで、出店エリアは関東圏です。この親和性があるがゆえに、関東圏で圧倒的なシェアをとれる商品が相当数あるはずです。
そういう意味でも、U.S.M.H専用のプライベートブランド(PB)商品の開発はしていかねばならないと考えています。3社合わせた営業収益は16年2月期で6600億円の見込みです。関東圏内で、単品で3億円?4億円売れる商品をつくる余地はたくさんあるはずです。
PB商品の開発については、今後の検討材料です。PBを開発するに当たって、重要なことはコンセプトづくりです。そこを間違ってしまうと、PBの本来の目的を見失い、安易な商品開発に終始してしまうことになりがちです。
PB商品には棚の中で最もいいスペースが与えられます。そのため競争原理が働かないことが、PB自体の行き詰まりの要因となります。
ナショナルブランド(NB)商品同様にPB商品にもライフサイクルがあり、必ず衰退期を迎えます。PB商品はカテゴリーの中で最も売れ、粗利益もとれる商品ですから、衰退期を迎えると、カテゴリー全体の売上が減少します。
しかし、企業の主張であるPB商品の配置は簡単には変えられません。そこで、リニューアルが必要になりますが、PBはリニューアルしたことが伝わりにくい特性もあります。
開発したてのPBはよく売れ、いつの間にかカテゴリーで売上ナンバーワンになります。しかしながら、開発時点で3年後の推移を考慮に入れて設計しておかないと、いずれ行き詰まってしまいます。その意味でもコンセプトづくりはとても重要で、SMにとってのPBの位置づけも含めて十分に議論をしていきたいと考えています。
PB開発は、理想的にはバイヤーやマーチャンダイザーが川上までさかのぼっていかなければいけません。産地まで入っていき、原料を吟味し、それに基づいた流通経路の確保と加工、そして店での売り方まで一貫して行うのが本来のマーチャンダイジングだと思います。そのようなPB開発ができる人材が育てば、NB商品の商談でも視野が広がってくるはずです。
──商品についていえば、生鮮の加工センターを新たにつくる計画があると聞いています。
上田 現在、カスミには茨城県土浦市に精肉、かすみがうら市にデリカのセンターがあります。また、マルエツには神奈川県川崎市と埼玉県三郷市に精肉・鮮魚のセンターがあります。それらセンターを実験的に相互活用することを考えています。
また、マルエツでは統合の前からデリカとベーカリーのセンター建設が俎上に載っていました。今回の統合により、汎用性のあるセンターを建設すれば、相対的な投資額が減りますし、稼働率も上がります。
ここでも、生産段階までさかのぼれば、生産、加工・製造から販売まで一貫性を持ったバーティカル・インテグレーション(垂直的統合)ができます。そのような加工・製造、販売の工程は押さえていきたいと思います。