日本市場でのEDLP浸透に手ごたえ=西友兼ウォルマートジャパンCEOスティーブ・デイカス
西友ドットコム始動でオンライン売上が1.5倍に拡大
──従来から展開していたネットスーパーに加えて昨年6月、オンラインサイトの「西友ドットコム」を立ち上げました。
デイカス 西友ドットコムをスタートするに当たり、千葉県柏市内に専用センターを開設しました。お客さまは3万品目にアクセス可能になっています。西友ドットコムでは、リアル店舗と同じEDLP価格で提供しています。
西友ドットコムのプラットフォームは、スマートフォン(スマホ)からの注文を想定しています。そのためお客さまがウェブ上で買物をする操作が非常に容易です。スマホでの利用を可能にしたこともあり、ドットコム事業の売上は対前期比50%伸長し、会員数は同40%増加しました。
実は、ウォルマートのグローバル全体でもドットコム事業は伸びており、2013年はグローバルで年商100億ドルを突破しました。
──ドットコム事業の品揃えは3万アイテムあるのですね。オンラインでは無限に近い品揃えができますが、適切なラインとはどこでしょうか?
デイカス 何が必要かは、個々のお客さまの選択です。ほかの多くのEコマース企業は、当社以上に多くのアイテムを提供しています。
ただ、われわれの務めは、お客さまの買物体験を可能な限りポジティブなものにすることです。つまり、お客さまが何かを欲したときに、それを見つけることができるということ。そういう意味では、3万アイテムで十分かもしれないし、300万アイテム必要なのかもしれません。
技術的には、お客さまがどのような買物体験をされるかを最も重視しています。バックシステムやテクノロジーについては、お客さまは気にしません。簡単に操作できるか、必要な商品が手に入るか、時間どおりに配達されるかが大切なのです。
従業員満足度の高さが企業成長の礎
──最後に、今期の出店計画を教えてください。
デイカス 13年度は4店舗をオープンしました。今年に入ってからは1月に蓮根坂下店(東京都)を開業しました。そのほかにもいくつかの物件を検討していますが、まだ発表する段階ではありません。
当面は既存店の業績を好転させることに注力していきます。事業の核を強化し、引き続き好業績を上げていくためには、既存店の改装は重要です。
M&Aの可能性については、いろいろな企業の方々と話してきましたし、今後もそうし続けます。買収して合併する場合もあれば、パートナーとして協業するかたちもあるでしょう。
明確にしておきたいのは、当社は買収自体を目的化していないし、規模拡大のためだけに買収を行うつもりもないということです。最大の企業になることが目的ではありません。ウォルマートが世界最大になったのは、最高になろうとしたからです。最高になろうとすれば、規模はおのずと大きくなります。ただし、当社が最高であるとは現在も思っていません。
お客さまには企業買収は関係ありません。お客さまの関心は、われわれがお客さまにどのように奉仕するかです。よりお客さまに奉仕すれば、ビジネスはよりよくなり、核となるビジネスが成長するでしょう。そして、パートナーシップの機会も得られるはずです。
私が今までに出会った優れた小売企業は、総じて小さな小売企業でした。そうした企業を見るたびに、「どうやって大きくなろうか」ではなく「どうすれば彼らのように最高になれるだろうか」と自問自答しています。
お客さまや社会にとってよい企業になることに加え、従業員にとってもよい企業になりたいと考えています。当社は毎年、従業員に対する意識調査を実施しています。同種の調査を行っている日本の平均的な企業の場合、従業員の貢献意欲スコアの水準は35%程度だと聞いています。当社の場合、12年度の調査では全社の貢献意欲スコアが50%でしたが、昨年1年間で55%へと上昇しました。これは誇らしいことです。経営幹部だけでなく、全社のマネージャーたちのすばらしいリーダーシップの成果だと思います。
従業員の貢献意欲と業績には、直接的な相関関係があります。ビジネスに対する従業員の関与が高まれば、事業の業績もより高まります。従業員一人ひとりの貢献意欲は、事業の成長の基礎なのです。
翻訳協力=太田美和子(フードマーケット・クリエイティブ)