消費者の「食事」の変化に対応!3年で既存店50店舗をリニューアル=サミット田尻 一 社長
──今期から改装を通じて新しいMDを既存店に次々と導入しています。
田尻 次の3年で既存店50店舗を改装する計画です。今期は14店舗、来期は20店舗です。現在、1カ月に2店舗のペースで改装を実施していて、担当チームは大忙しです。
改装には投資がかかるので、今後1~2年は減益決算になるかもしれません。しかし、新MDを導入した店舗は売上が10~15%伸びますから、3年後の数字をとても楽しみにしています。
──新規出店を抑制して、既存の店舗展開エリアのマーケットをしっかりと防衛していくということですね。
田尻 あまり出店エリアを広げては非効率です。せっかく人口の厚い好環境にたくさんの店舗があるのですから、再度、需要を深掘りしたほうがいいという判断です。
当社は1963年に出店した1号店(現サミットストア野沢店)が現存しています。創業から50年を経て、多くの店の店舗年齢が高くなっています。しかも東京23区内には売場面積150坪から600坪までさまざまな規模の店舗があります。古くて規模の小さい店舗は総菜のアイテム数が少なかったりします。そのような古い店舗を中心に、バックヤードまで含めて大改装し、新しいMDを可能な限り導入していきます。当社のお客さまの中には、「サミットの店舗は古いし総菜も少ない」と思われている方も少なからずいらっしゃいますから、そのイメージをがらりと変えていきたいと考えています。
SMは個性を競う時代へ
──SM企業の多くが苦戦しています。現状の「食」のマーケットについてどのようにとらえていますか。
田尻 総合スーパーやDgS、CVSなど、食品を扱う店舗が多くなりすぎて、供給過剰になっています。どの業態も、ほかの業態からどのようにして食品の需要を奪うかという似たような戦略です。
日本の消費者の支出総額は、1978年と比べると今は1.5倍に増えています。しかし、78年の食料品支出を100とすると、今は94ぐらいまで減っています。メーカーや卸売業、そしてわれわれ小売業の血のにじむ努力によって商品の単価は下がってきました。日本の消費者は「食」に対してあまりお金を使わなくて済むようになった一方で、ほかへの支出は増やせるようになったのです。消費者の生活の中で、「食」の優先順位は下がってきているのではないでしょうか。
今、その「食」のマーケットをめがけてDgSやCVSなどが進攻してきています。CVSをはじめとして、SMと同じ価格のNB商品を扱っているのであれば、消費者は自宅から近い店舗に行くはずです。物理的な距離はどうすることもできません。多くのSMが客数減に苦しんでいますが、コモディティ商品を扱っている以上、それはしょうがないことだと思います。
──とすると、大きな売上の拡大が見込めない中では、既存店の戦略がポイントになりますね。
田尻 もちろん新規にファンを増やしていくことは大切ですが、一方で、現在お店に来ていただいているお客さまにも引き続きご利用してもらわなくてはなりません。単身世帯や多人数世帯、若者や高齢者、有職主婦や専業主婦など、食事の事情はそれぞれ異なると思います。ですが、せっかく当社の店舗にご来店いただいたのですから、お客さまの「食」に関するあらゆるニーズに対応し、食料品の買物はすべて当社の店舗でしていただくようにフリクエントなファンになっていただきたい。
──すべての顧客の維持・深耕に力を入れるとなると、打つ手は複雑になります。
田尻 そうです。
SMにとって、エリアごと、時間帯ごとのマーチャンダイジングがさらに重要になると考えています。価格政策でもそうですが、商圏内の特性は千差万別です。それにきめ細かく対応する必要があります。これからは、MDのベースの7割は共通で、残り3割はエリアの特性に対応しなければだめだと思います。
また、他店に浮気されないような魅力や個性も必要になります。その個性は企業によってさまざまな考え方があるでしょう。低価格、商品の品質、接客、サービスも個性になります。今は、その個性をお客さまにどのように認識してもらえるかという勝負になっています。
新しいMDの取り組みを始めて、当社の個性の方向性はある程度見えてきました。ただし、当社の方向性で個性を出すためには人時がかかるので、販売管理費はどうしても増えます。当社の場合は付加価値の高い商品やサービスを提供することで、販売管理費の増加をカバーしていくしかないと考えています。だから売上規模は拡大しても利益率は低くとどまると思います。