消費者の「食事」の変化に対応!3年で既存店50店舗をリニューアル=サミット田尻 一 社長

聞き手:千田 直哉 (編集局 局長)
構成:小木田 泰弘
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消費者の日々の「食事」に急激な変化

──一方で、消費者の「食」の変化への対応はどのように行っているのですか?

田尻 当社は「日々の食事の材料提供業者」と自らを定義していますが、最近、少しだけ変更を加えました。「食事」を、食事の材料、食事そのもの、その中間の半加工品の3つに整理したのです。

 SMの社会的な機能は変わっていませんが、消費者の食事の変化には対応していかなければなりません。先のMDと同じで、7割は変わりませんが、残り3割は常に変えていかなければならないと思っています。

 消費者の生活や食事、購買行動は日々少しずつ変化しています。われわれ小売業は常にアンテナを張って、変化をとらえてそれを売場に打ち出す。これがとても重要で難しい。

 最近、明らかに感じる大きな変化は、消費者の調理時間が短くなっていることです。今、われわれが考える以上に急激な変化が起きています。

 たとえばこの7月前半は猛暑で気温が高い日が続きました。一昔前ならばそうめんや冷麦が飛ぶように売れましたが、今年は気温が高い日でもさっぱりでした。消費者は「鍋で茹でる」ということもしなくなっているのです。代わりに売れたのは、水で洗うだけで食べられるチルドの生麺です。そこにどのような価値を付加して単価を高めていくか。これがポイントになります。

──サミットは「消費者モニター制度」を通じてお客の生の声を聞いたり、「サミットポイントカード」を通じてお客の購買履歴データを取得しています。変化に対応するための武器になりますね。

田尻 モニター制度は、20~50代の主婦層に集まってもらい、話を聞いています。ただ、こちら側に「質問力」がなければ本音は見えてきません。ポイントカードについては、ID-POS(※)ではデータが膨大なので、顧客単位で分析しようがないのが現状です。ですからモニター制度を活用して仮説を立て、購買履歴データで検証するようなかたちで変化対応策を練っています。

 もう1つ、女性社員の活用が武器になると考えています。SMがターゲットにしているのは主婦層ですから、社内にいる400人の女性社員をマーケッターとして活用しない手はありません。一部の部署で女性社員にアドバイザー的な役割を与えています。それがうまくいけばどんどんマーケッターとして活用していきたいと考えています。

──さて、今年は創業50周年。さまざまな仕掛けやイベントを企画しているそうですね。

田尻 11月中旬、当社1号店の野沢店を隣接地に移転新築します。この新しい野沢龍雲寺店は、これまで取り組んできた新しいMDの集大成の位置づけです。当社の現状の変化対応力をすべて売場に表現したいと考えています。

 また、旧野沢店を活用し、期間限定で「スーパーマーケット・ミュージアム」を開設します。SMの歴史を単に振り返るためのものではなく、これからの日本を支える子供達を対象に、SMを知ってもらう場と位置づけています。旧野沢店を「学習館」、野沢龍雲寺店を「体験館」として店舗見学ツアーを企画しています。

 当社は創業50周年の節目を迎えました。今後の50年を見据えてお客さまの変化にしっかりと対応していきたいと考えています。

※ID-POS:顧客ID(identification:顧客を識別するための符号のこと)の付いたPOSデータのこと
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聞き手

千田 直哉 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア 編集局 局長

東京都生まれ。1992年ダイヤモンド・フリードマン社(現:ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。『チェーンストアエイジ』誌編集記者、『ゼネラルマーチャンダイザー』誌副編集長、『ダイヤモンド ホームセンター』誌編集長を経て、2008年、『チェーンストアエイジ』誌編集長就任。2015年、『ダイヤモンド・ドラッグストア』誌編集長(兼任)就任。2016年、編集局局長就任(現任)。現在に至る。
※2015年4月、『チェーンストアエイジ』誌は『ダイヤモンド・チェーンストア』誌に誌名を変更。

構成

1979年生まれ。2009年6月ダイヤモンド・フリードマン社(現ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。「ダイヤモンド・チェーンストア」誌の編集・記者を経て、2016年1月から「ダイヤモンド・ドラッグストア」誌副編集長、2020年10から同誌編集長。

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