絶好調アルペン、水野敦之社長の打ち手が示す、コロナ禍で浮上する企業と転落する企業の境目とは

2021/02/12 05:55
油浅 健一
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アルペン躍進、数字では見えない要因とは

 だが、同社の躍進をこうした点だけでみると本質を見誤る。アウトドアやゴルフ需要の増大はあくまでもひとつの要因に過ぎない。なにより、それだけで、純利益、売上高、営業利益、経常利益の全項目で上場来最高業績を達成する説明はつかない。

 最大のポイントは今期の結果を受けた水野社長の言葉の中にある。 
 「昨今力を入れてきた様々な改革の成果であり嬉しく思う」。
 この言葉通り、今期の飛躍は、まさにここ数年の改革が着実に結果に結びついたものといえる。

 起点となるのは、2018年7月。この時、同社は上場来初の赤字に転落。自然災害によるレジャー低迷の影響もあったが、値引き販売の常態化など、体質的な不全さも大きな課題となっていた。そこで水野社長が改革の軸に据えたのが粗利率の改善だ。

 不採算店舗の閉店および業態転換、希望退職募集によるリストラ、店舗設計見直しによるアルバイト人員の最適化、プライベートブランド(PB)の強化、デジタル化による業務効率化など、この2年は徹底して贅肉を削ぎ落してきた。

 一方で他社に劣るEC領域の強化にも着手。併せて、500万人を突破したアルペングループメンバーズ会員の増加やデータ活用による需要の安定化と先取り施策にも取り組んだ。強い危機感を持って臨んだ2年前の大胆な改革がようやく浸透し始めたちょうどその時、コロナが発生したのだ。

 通常、こうした改革には強い痛みを伴う。成果が出るまでに時間もかかる。ところが、コロナという緊急事態により、いわば短期集中的に実力が試される機会が到来。同社は見事に成果に結びつけた。21年6月期第2四半期の数字でも、注力していた粗利率は前年同期の40.5%から43.2%に大幅に改善されている。

 同社もコロナの影響を受け、マリンや競技スポーツなどは低調だった。たが、売れ筋の見極めや在庫圧縮などで、ダメージを最小限に抑え込んでいる。

 コロナ発生後、「あらゆる施策を5年10年前倒しでやらなければいけなくなった」という経営者の声があちこちで聞かれる。同社は、幸か不幸か、絶好のタイミングで企業としての抜本改革に取り組む必要に迫られた。そして、それをやり遂げた。これこそが、コロナ禍で際立った同社躍進の“真実”だ。

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