「その話はもう聞いた」という日本人 身につけるべき真の「戦略的思考」とは?

河合 拓 (株式会社FRI & Company ltd..代表)
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私が講演を行うと、必ずでてくる質問や感想は「その話はもう聞いた」である。つまり、「もっと新しい話はないのか」と言いたいわけだ。しかし、経営戦略の本質に「新しい、古い」はないのである。この根本にある問題として、「言葉や用語」は知っているけれども、その用語やフレームワークを使って、自社の環境を分析した上で、戦略に落とし込むと言うことが日本人は苦手だと言うことだ。そうした我々日本人が身につけるべき「戦略的思考」を解説したいと思う。

taa22 / iStock
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競争戦略は普遍 競争環境が変わったのである

 経営戦略に古いも新しいもないのだが、あえていうなら以下のような状況の変化が起こっていることを認識したい。①成長市場だった時代のビジネスモデル、考え方、経営のまま成熟市場そして循環経済下に移行したことで、戦い方のルールが変わってきた。②デジタル化という「よく切れる刃物」が登場し、米国を中心に加速度的に技術が進歩しているのに、我々日本人は、その使い方を理解できていない。③競争が国をまたいでおり、今まで海外で戦った経験が無い日本企業が、いきなり世界戦で戦わねばならなくなった。つまり、自社を取り巻く環境が激変しているのである。それなのに、従来の延長線上でビジネスをしていてもうまくいくはずがないのである。

 次に、日本という国に目を向けると、数々の経済政策に失敗し、OECDの中で最も成長していない国になった。国民は将来に希望が持てず、企業は努力に努力を重ねデフレ企業ばかりが勝ち組となった。日本は「安いが質はよい」というイメージの国となっている。一方で、高額商品は、確かにインバウンドを中心に売れた。だが、それは、「日本人は真面目だから偽物は売らないだろう」という理由からくるもので、欧米のブランド品が日本で売れた、というだけの話である

 それなのに政府は真逆のインフレ政策をとり、いつまで経っても物価が上がらないことに首をかしげている。当たり前である、将来が不安なのに毎年高価な服など買って着飾っている場合ではない。今、若者に「貯金ができたら何を買うか?」と訪ねたら、「クルマが欲しい」と答えるかと思いきや、「投資信託を買う」などという。


 新しい話を聞くまえに、こうした基本的な分析を行い、今私たちの競争環境がどうなっているのか、そして、その中で新しい勝ち方は何かを自分で考えればよいと私は思う。普遍的かつ、基本的な戦略コンセプトは過去の古典にいくらでも書いてある

 

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記事執筆者

河合 拓 / 株式会社FRI & Company ltd.. 代表

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

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