アルディ、リドルだけじゃない!欧州の注目DS、ペニーとネットーを知っているか?
欧州のディスカウント企業と聞いて、アルディ(Aldi)とリドル(Lidl)を思い浮かべる人は少なくないだろう。しかし、これら2社より売上や事業規模は小さいものの、オーガニック食品の強化やスマホアプリの活用などアルディやリドルと異なる独自の取り組みを進めている企業も存在する。本稿では、ペニー(Penny)とネットー(Netto)の小型ディスカウントストア(DS)2社の取り組みを解説する。
レーヴェ・グループの先進DS 「ペニー」
最低価格保証で競合店に対抗

ペニー(Penny)は、ドイツのレーヴェ・グループ(REWE Group)傘下のDSだ。2019年度の売上高は、対前期比2.4%増の127億ユーロ(約1兆5875億円:1ユーロ=125円で換算)。2150店舗を運営するドイツを中心に、オーストリアやイタリアなど、欧州6カ国で店舗を展開し、本国ドイツの売上高が約6割を占める。競合するドイツのハードディスカウントストア(HDS)であるアルディやリドルと比較すると、ドイツ国内の売上規模は小さく、店舗数も少ない。
ペニーの定番商品の取り扱い品目数は約2000品目。ベーシックラインのプライベートブランド(PB)「ペニー(PENNY)」を中心に、オーガニック食品に特化した「ナチュールグット(Naturgut)」、ビーガン向けの「フード・フォー・フューチャー(Food For Future)」に加え、新鮮で品質の高い青果物を低価格で提供する「ペニー・マルクトスタンド(P E N N YMarktstand)」、ピザやサンドイッチといった軽食や飲料を扱う「ペニー・レディ(PENNY READY)」など、商品カテゴリーごとのPBも展開している。20年6月には、「ナチュールグット」の50品目以上を対象に、欧州連合(EU)の栄養評価スコア「ニュートリ・スコア(Nutri-score)」に基づく栄養成分表示を導入するなど、より健康的な食の選択肢を消費者にわかりやすく伝える取り組みも進めている。

ペニーの定番商品の価格はEDLP(エブリデー・ロー・プライス)政策を基本としながら、特売やクーポン割引などの販促活動を実施している。また、専用ステッカーで明示された商品を対象に最低価格を保証し、アルディやリドルら競合店の低価格に対抗しているのも特徴だ。同一商品においてペニーの価格がドイツ国内の他の実店舗の価格を上回っていることを消費者が示せば、その差額を割り引く仕組みとなっている。
標準店は約700㎡
新フォーマットの開発も
ペニーは、レーヴェ・グループ傘下の食品スーパー( S M )「レーヴェ(REWE)」などドイツ国内の多くの小売企業が加盟する共通ポイントプログラム「ペイバック(PAYBACK)」に加盟し、顧客の囲い込みや顧客ロイヤルティの獲得につなげている。「ペイバック」の会員には、購入金額2ユーロ(250円)ごとに1ポイントが付与される仕組みだ。
ペニーは、公式スマホアプリ「ペニー(PENNY APP)」の活用も積極的に進めている。特売情報や割引クーポンを配信するほか、買物リスト機能など店舗での利便性を高める機能が搭載されている。また、バーコード読み取り型専用セルフレジアプリ「スキャン&ゴー(Scan & Go)」をリリースし、ドイツの110店舗以上でスマートフォンによるレジレスサービスを導入。このスマホアプリで店舗の入口に掲示されているQRコードを読み込んで入店し、購入する商品のバーコードを読み取りながら買物する。最後は専用機でキャッシュレス決済により精算する流れだ。
ペニーの標準店の売場面積は約700㎡で、アルディやリドルよりも小さい。米国や英国を中心に出店を加速させるアルディやリドルに対し、ペニーの店舗数は近年、微増にとどまっており、新規出店よりも既存店の改装や店舗レイアウトの改良に注力している。ドイツでは、12年から15年までに全店舗を改装したのに続き、19年5月、首都ベルリン郊外の2店舗で「ペニー・レディ」を中心に軽食や飲料の品揃えを拡充させた新フォーマットを試験的に導入した。オーストリアでも、売場面積672㎡の新たな店舗フォーマットを19年から展開させている。
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