ムダを徹底的に省くことで低価格を実現する愛知の隠れた有力スーパーカネスエ、強さの秘密を分析

調査・文:矢野清嗣
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青果の価格はタチヤと同等以下

カネスエ砂美店の外観
カネスエ砂美店

 ここからは、「カネスエ砂美(すなみ) 店」(愛知県名古屋市:以下、砂美店)を軸に、カネスエの競合対策を見ていく。同店は、名古屋臨海高速鉄道あおなみ線「荒子川公園」駅から約500mの場所にあり、周辺の競合店としては、すぐそばにバローホールディングス(岐阜県/田代正美会長兼社長)傘下のタチヤ(愛知県/坂本勝社長)が運営する「タチヤみなと店」がある。なお、駅のすぐそばには大型ショッピングセンター(SC)の「イオンモール名古屋みなと」があるが、同店は21年2月に閉店が決定している。

 砂美店はホームセンターの居抜き店舗で、売場面積約600坪(歩測)の大型店だ。冷凍食品売場は圧巻の広さで、店内の通路幅も広めに確保している。商品構成などは阿久比店とほぼ変わらない。

 ただし、生鮮食品の価格に関してはすぐそばのタチヤみなと店を意識しており、とくに青果ではそれが顕著に表れている。「えのき茸」(1個75円)、「ほうれん草」(147円)、「キュウリ」(3本137円)、「レタス」(97円)、「白菜」(2分の1カット127円)など、タチヤみなと店と同等かそれ以下の価格で販売していた。

タチヤみなと店の外観
タチヤみなと店

 タチヤみなと店は「西松屋」や「眼鏡市場」などで構成されるSCの1階に出店しており、売場面積約300坪(歩測)で生鮮食品を中心に圧倒的な低価格で販売する生鮮ディスカウントSMだ。「当日仕入れた商品は当日売り切る」が基本で、生鮮各部門に多くのスタッフを投入している。

 店頭ではリンゴやナシ、柿などを袋入りで販売。店内はSMというより市場のような雰囲気で、加工場と売場には仕切りがない。野菜は量感を持たせた陳列で、「えのき茸」(2個150円)、「ほうれん草」(150円)、「キュウリ」(4本200円)、「レタス」(1玉128円)、「白菜」(2分の1カット150円)などを販売していた。鮮魚は丸魚や寿司を、精肉は大容量商品を中心に展開。日配品や加工食品、菓子なども取り扱っているが、売れ筋商品に絞りこみ、価格訴求商品中心に構成している。

 カネスエもタチヤも価格訴求型の店舗だが、カネスエは合理性を追求しPCを活用する一方、タチヤは直接店舗が商品を仕入れて加工を行っており、まさに真逆の対応だ。両社とも首都圏や関西圏のSMには見られない独自のスタイルを追求している。

 イオンモール名古屋みなとの食品売場も砂美店を意識してか、「うどん1玉」(17円)、「豆腐300g」(32円)、「納豆3P」(45円)など価格訴求の商品が目立つ。野菜でも「えのき茸」(128円)、「キャベツ」(195円)、「レタス」(128円)など低価格商品を多く投入。カネスエの影響を受けているのは明らかである。

 カネスエの売場は無駄な装飾がなく、商品が整然と並んでいる印象だ。売場はゆったりとしており通路も広く開放感がある。エンドもメーン通路のみで催事場も少なく、極力作業量を減らしているようだ。レジ周りも保冷用の氷のみの提供で、チラシや会員の募集用紙が机に置いてあるだけである。商品についてもPCを活用したり、原材料の無駄を省いたりするなどの取り組みを価格に還元させている。「無駄なことはしない、させない」合理的な考えのもとに行われているローコスト運営が、カネスエの圧倒的な低価格戦略を根底で支えているのだろう。

カネスエ砂美店概要

所在地 愛知県名古屋市港区砂美町2
開店日 2017年5月10日
売場面積 約610坪(歩測)
営業時間 8:00~21:00
駐車台数

約170台

タチヤみなと店概要

所在地 愛知県名古屋市港区築盛町120
開店日 2007年6月7日
売場面積 約300坪(歩測)
営業時間 10:00~18:00(水曜日定休)
駐車台数 342台
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