実は脱レッドオーシャンの有力戦略、ディスカウンティング型スーパーへ転換する手法と手順
店内作業のセンター化でローコスト体質の企業へ
安売りの前提となるのはローコストオペレーションだ。販売管理費が高ければ、原資となる粗利益高が削られて利益が出なくなるからである。したがってディスカウンティング型SMにとって商品調達価格の低減とローコストオペレーションは、車の両輪のように同時に稼働することでパワーを発揮する。
前述したように、そのためには物流センター建築の設備投資が不可欠だ。現在店舗で実行されている業務と作業を、店でしかできないことのみに絞り、残りはすべて本部または物流センターに集めて実行する。そうすると店の作業は①補充、②チェックアウト、③掃除のみになる。事故処理とお客の応対には店長が当たる。
同じゾーンに属する全店分の作業を物流センターに集めれば大量になるので、最新の機器を使って効率的に作業を進められる。デジタル技術の進化によって自動化できる作業の範囲は広がり続けているのだ。それらの作業を店ごとに個別に実行すれば人海戦術から脱却できず、進化は望めない。その差は想像以上に大きく、格差は拡大する一方だ。
発注量の決定も同様に、物流センターに所属する社内ディストリビューターが、次の補充日までの販売数量を予測する。全店の販売データをまとめて分析することで正確に予測できるようになるのだ。
その結果、店のバックヤードに在庫がたまらないようになる。短期での特売もしないから後方在庫をゼロにできるのだ。すると無駄な店内作業がなくなり、総人時数も減らせる。
魚や肉のプリパッケージや総菜の調理・加工などもセンターで実行するため、その人時も必要なくなる。それだけでなく、調理・加工技術の訓練もしなくて済む。さらに調理・加工場も不要だから売場面積を増やせる。ディスカウンティング型SMの場合、店舗面積の8割以上を売場にできる。
ディスカウンティング型SMで、最も高い比重を占める店内作業は商品の補充だ。したがって、店舗レイアウトは楽に作業ができる工夫が必要となる。お客のワンウェイコントロール対策とは別に、補充動線の確保がいるのだ。通路はハンドリフトや籠車が楽に通れる幅を確保し、曲がり角は少なくする。堅固なドミナントエリアなら補充部隊は店の専属ではなく、各店を巡回して作業することもできる。専任なら短時間で完全作業が可能である。
ディスカウンティング型SMを完成させるためには商品と作業、そしてセンターと店舗、それぞれに改革が必要である。今こそ、それを進めるときである。
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