ウィズコロナ時代のショッピングセンター経営5 「集まれない社会」到来で果たすSCの新たな役割と機能
コロナ禍で変わる「集める」ビジネス
新型コロナウイルス感染拡大で我々の生活は一変した。これまで人と人との接触を前提にした展示会、集合研修、セミナー、異業種交流会、講演会、懇親パーティ、結婚式、球場、コンサート、スポーツクラブ、カルチャーセンター、飲食店など数え上げたらキリが無いほど我々は「集まる」ことで生活をしてきた。
そして、人を「集める」ことで収益を上げるビジネスも多い。これらのビジネスが元通りになるまでには相当の期間がかかることが予想されるが、一方でこれをきっかけに新たなビジネスチャンスも生まれている。
例えば、「ゴーストキッチン」。客席を持たず宅配を前提にした飲食ビジネスだが、これもウーバーイーツなどの宅配マッチングシステムがあったからこそ実現したビジネスだ。
その他、記憶に新しいのは、サザンオールスターズの無観客ライブに18万人がアクセスし、6.5億円も売り上げたと聞く。
今後、我々が考えければならないことは、人を集めずに、もしくは集めても少人数で成り立つビジネスを組み立てることだ。
例えば、野球場。何万人も収容してその入場料を前提に大規模な施設を建設した。しかし、今後は多くの集客が出来ない。したがって、球場に入るためのチケットは高額になり、その発券枚数は大幅に減らさざるを得ない。一方で、自宅で鑑賞する顧客に対して、低廉な価格で直接チャージする仕組みを考える必要が出てくる。
これまで民放局のテレビ放映はスポンサーを付けCMを流すことで視聴料を無料としてきた。しかし、Amazon Prime TVやNetflixなどは有料の配信サービスだ。
この前提で考えれば、球場やコンサート会場での鑑賞とテレビ(やPC、スマホ)での視聴、それぞれからチャージする仕組みを、野球場や集会場、宴会場など人を集めて収益を上げてきた企業は創造することを迫られているのだ。
「オンライン文化」があらゆる前提を覆す
コロナ禍でビジネスの現場で変わったことと言えば在宅ワークだろう。通勤を不要にし、働き方を大きく変えた。元通りに出社する企業も出ているが在宅ワークを基本とする企業も多い。
またオンラインは、会社だけでなく大学など自宅学習にも導入され、通学を不要にした。オンラインツールもskypeやZOOMなど以前から存在したが、コロナ禍をキッカケに拡大、その他Google meets、microsoft teams、Live onなど多くのオンラインツールが活用されている。
このオンライン行動を単に緊急避難的な措置と考える人もいるが、私は新しい「オンライン文化」になると思っている。理由はその効率性の高さだ。
それに伴い、オフィスの規模は縮小するだろう。オフィス不要論は極論だが、少なくともオフィスニーズは減少することはあっても増えることは無いだろう。
そして、学校や予備校は今後、校舎も最低限で済む。これまで予備校などは大きな校舎を利便性の高い東京の一等地に構えていた。だが配信設備さえあればわずかなスペースで済み、著名な人気講師の講義を日本中から視聴するようになる。東進ハイスクールの林先生の授業を自宅で受けるのだ。
したがって地方にある塾や予備校は淘汰が進むだろう。
何よりオンライン受講は定員という概念をも無くす。入学試験を経ずとも大学の授業を全国から受講し、大卒の肩書を得ることも可能になるだろう。
前期後期に分かれ、休みの多い大学。4年生ともなれば就活に明け暮れても必要な単位を取れるほど大学の単位数は少ない。とすればオンラインで休みなく受講すれば4年かけずに卒業することも、複数の大学へ入学も可能になるかもしれない。
実験や研究室、ゼミなどもあるので一概には言えないが、定員制、入学試験、通学、東京への転居、4年制などの仕組みは根本から変わるはずである。職を失う講師も出てくるだろう。
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