ヨーク大竹正人社長が語るセブン&アイの首都圏SM戦略と鍵握る3つのフォーマット
6月1日、セブン&アイ・ホールディングス(東京都/井阪隆一社長:以下、セブン&アイ)の完全子会社であるヨークマートが商号変更し、新会社ヨーク(東京都)が発足した。イトーヨーカ堂(東京都/三枝富博社長)の都市型食品スーパー(SM)「食品館」をはじめ、首都圏で展開するSMやディスカウントストア(DS)を傘下に統合させて、セブン&アイの「首都圏食品戦略」を推進させる。その成長戦略をヨークの大竹正人社長に聞いた。
立地に応じた店舗展開でディスカウント型SMにも対抗!
──ヨークが発足し、セブン&アイの「首都圏食品戦略」が大きく動き出しました。現在の商環境をどのように見ていますか。
大竹 ヨークが店舗展開する首都圏は肥沃なマーケットが広がることから、競争環境は非常に厳しいです。当社の前身であるヨークマートの2020年2月期売上高も1429億円(対前期比98%)、営業利益は7億円(同42%)と伸び悩んでいます。
競合他社のなかでも強さが際立っているのが、オーケー(神奈川県)さんやロピア(神奈川県)さんといったディスカウント型SMです。競争に勝ち残っていくには、これらの企業に対抗できる強みが必要でしょう。
──具体的にいかに競合他社に対抗していくのでしょうか。
大竹 ヨークマートは17年度から、来店動機を創出するための新規MDの構築に力を注いできました。この新規MDを進化させ、またイトーヨーカ堂から承継した「食品館」とDS「ザ・プライス」に融合させることで、新たなフォーマットができつつあります。これを一つひとつ磨き上げ、立地によって使いわけて店舗展開することで競合他社に対抗していきたいと考えています。
──新たなフォーマットとはどのようなものですか。
大竹 標準型、小型、DS対抗型があります。まず標準型は、新規MDを導入し、鮮度感や快適な買物の提供に力を注ぐフォーマットで、最近の成功例に「ヨークマート小豆沢店」(東京都板橋区)があります。同店は18年3月、セブン&アイのショッピングセンター「セブンタウン小豆沢」内の「食品館」の撤退跡に出店した店舗です。新規MDとして、店内加工の魚総菜やサラダ、スイーツといった付加価値の高い商品や、インストアベーカリーなどを導入した結果、18年4~12月の売上高は対前年同期比141%と大きく伸長しました。最近では週末には全店で売上がナンバーワンになる日もあるほど成長を続けています。
──小豆沢店は「食品館」時代は業績が振るわなかったわけですが、「食品館」の課題はどこにあったのでしょうか。
大竹 総合スーパーを主力とするイトーヨーカ堂では、「食品館」は規模的に小型店の扱いとなってしまい、十分な人員を充てることができていませんでした。
そこで「ヨークマート」に転換後は、最初は利益率を削ってでも人員を投入して“めざすべき売場”を実現させることを優先し、売上高を伸ばした後、効率性を高めていきました。その結果、小豆沢店は20年2月期には利益も稼げる店となり、今では人時売上高も約1万6000円まで向上しています。
──5月13日には、標準型フォーマットの最新店で、新屋号を掲げた1号店「ヨークフーズちはら台店」(千葉県市原市)を開業しました。利用動向はいかがですか。
大竹 非常に好調です。開業に当たっては、新型コロナウイルス感染症が拡大するなか店内の混雑を避けるべく、オープン日のチラシ枚数を約5000枚に抑え、かつ価格も掲載しませんでした。
それにもかかわらず、新規MDを中心に支持を得て、1人当たり買い上げ点数は「ヨークマート」平均が11点であるのに対し、同店は13点と高く推移しています。
今後ちはら台店の成功例を、既存の「ヨークマート」にも改装のタイミングで導入し、屋号も「ヨークフーズ」に転換していく計画です。